悪性膵島腫瘍による多発性肝転移に対してmicrosphereを併用したstreptozocin肝動注及びRF-hyperthermiaが奏効した1例

【はじめに】日本では, 悪性膵島腫瘍に対して適応のある抗癌剤では充分な治療効果が期待できない. 今回, 我々は悪性膵島腫瘍による多発性肝転移に対してmicrosphereを併用したstreptozotocin(STZ)肝動注及びRF-hyperthermia(RF-HT)を施行し, 多発肝転移巣の縮小と低血糖発作のコントロールをし得た1例を経験したので, これを報告する. 【症例】50代男性. 【現病歴】2006年4月初旬に眩暈, 嘔吐にて発症し入院. CTにて多発性の肝転移を伴う良く造影される膵尾部腫瘍性病変を認めた. また, 血中インスリン濃度の異常高値及び低血糖発作を認めた. Wippl...

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Published inThermal Medicine Vol. 23; no. 3; p. 174
Main Authors 加藤成, 片山寛次, 小練研司, 永野秀樹, 本多桂, 村上真, 廣野靖夫, 前田浩幸, 五井孝憲, 飯田敦, 山口明夫, 今村好章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Japanese Society for Thermal Medicine 2007
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Summary:【はじめに】日本では, 悪性膵島腫瘍に対して適応のある抗癌剤では充分な治療効果が期待できない. 今回, 我々は悪性膵島腫瘍による多発性肝転移に対してmicrosphereを併用したstreptozotocin(STZ)肝動注及びRF-hyperthermia(RF-HT)を施行し, 多発肝転移巣の縮小と低血糖発作のコントロールをし得た1例を経験したので, これを報告する. 【症例】50代男性. 【現病歴】2006年4月初旬に眩暈, 嘔吐にて発症し入院. CTにて多発性の肝転移を伴う良く造影される膵尾部腫瘍性病変を認めた. また, 血中インスリン濃度の異常高値及び低血糖発作を認めた. Wippleの3徴から肝転移を伴う悪性インスリノーマと診断した. 【経過】先ず, 膵原発巣に対し膵体尾部切除術を施行し, 同時にリザーバー型カテーテルを固有肝動脈に留置した. 術前, 病態上はインスリノーマと診断したが, 術後の免疫組織学的所見では非機能性のEndocrine tumor(well differentiated endocrine carcinoma:WHO classification)の診断であった. 術後に1回/週の日程で, STZ(2g/body), 5-FU(500mg/body)及びMMC(4mg/body)による肝動注をdegradable starch microsphere(DSM 900-1,200mg/body)を併用して計8回施行した. CT上, 多発肝転移巣は縮小傾向が見られたものの, 低血糖のコントロールは得られず, diazoxideを投与した. また, 肝内に新病変の出現が認められたため, 肝動注9回目以降はRF-HTを併用した. 肝動注9回終了後のPFTでは肝転移巣へのFDGの集積はほとんど認められなかった. RF-HT併用の肝動注を2回終了した時点でのCT所見では, いずれの転移巣も縮小傾向が見られ(最大24%まで縮小), 新病変の出現も認めなかった. また, 低血糖発作もdrug freeでコントロール可能となった. 以後, 外来にて経過観察を行っているが, 肝転移巣の増悪や低血糖発作の再燃は認めていない. 【結論】DSMを併用したSTZ肝動注及びRF-HTは悪性膵島腫瘍による多発性肝転移に対して有効であると考えられた.
ISSN:1882-2576
1882-3750