食道癌に対する温熱化学照射療法(HCR療法)の治療成績と展望

【目的】教室では食道癌に対する集学的治療の一環として温熱療法を取り入れ, その治療成績を報告してきた. 食道癌の集学的治療における温熱療法の意義を明らかにすることを目的として, 1)温熱療法の付加による放射線化学療法(以下CR療法)の局所治療効果の増強, 2)組織学的治療効果別にみた生存率の解析, 3)T4食道癌に対する温熱化学照射療法(以下HCR療法)の治療成績について検討を行った. 【対象および方法】1981年から2003年3月までに当科で治療した食道癌症例の中から, 1)術前治療施行後に切除再建術を施行された進行食道癌症例のうちCR療法群132例およびHCR療法群177例, 2)術前治療...

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Published in日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 19; no. suppl; p. 50
Main Authors 渡邊雅之, 馬場秀夫, 二木元典, 木村和恵, 徳永えり子, 沖英次, 後信, 掛地吉弘, 前原喜彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 2003
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Summary:【目的】教室では食道癌に対する集学的治療の一環として温熱療法を取り入れ, その治療成績を報告してきた. 食道癌の集学的治療における温熱療法の意義を明らかにすることを目的として, 1)温熱療法の付加による放射線化学療法(以下CR療法)の局所治療効果の増強, 2)組織学的治療効果別にみた生存率の解析, 3)T4食道癌に対する温熱化学照射療法(以下HCR療法)の治療成績について検討を行った. 【対象および方法】1981年から2003年3月までに当科で治療した食道癌症例の中から, 1)術前治療施行後に切除再建術を施行された進行食道癌症例のうちCR療法群132例およびHCR療法群177例, 2)術前治療後に切除再建術を施行した進行食道癌症例309例, 3)切除標本で病理学的にT4と診断されたCR療法群36例およびHCR療法群49例, を対象とし組織学的治療効果および予後の解析を行った. 【結果】1)術前治療を施行した進行食道癌症例のうち, 組織学的治療効果がGrade2以上であった症例はCR療法群で68例(52%), HCR療法群で116例(66%), Grade3が得られた症例はCR療法群で15例(11%), HCR療法群で42例(24%)であり, いずれもHCR療法群で有意に多かった. 2)組織学的治療効果がGrade3であった57例の5年生存率は55.6%であり, Grade1の14.5%, Grade2の28.2%に比較して有意に予後良好であった. 3)T4食道癌においてGrade3が得られた症例がCR療法群では2例(5.6%), HCR療法群では6例(12.2%)に認められた. CR, HCR両群でGrade3が得られた8症例の5年生存率は57.1%でGrade1の8.7%, Grade2の7.4%に比較して有意に良好であった. また, Grade3が得られた8例のうち3例は10年以上の長期生存が得られている. 全症例において温熱療法による重篤な合併症は認めなかった. 【結論】温熱療法はCR療法の治療効果を増強することが示された. 進行食道癌においては術前治療でGrade3が得られれば長期生存が期待できることが明らかとなり, より高い局所治療効果を得るために温熱療法が有用であると考えられた.
ISSN:0911-2529
1881-9516