体温調節抑制プログラムによる無麻酔全身加温装置

【目的】全身ハイパーサーミア(Whole Body Hyperthermia-WBH-)における癌治療は, 高体温による細胞障害に加えて, 血管内皮増殖因子など転移促進因子の熱による抑制反応2, 3)が注目されている. 我々は, 同治療方法の普及に向けて, より浸襲を少なくした生体加温法に取り組んでいる. 今回, 特異的な周期の加温によって体温調節の生理作用を抑制し, 無麻酔において全身加温を施した. またその時の皮膚温度と直腸温度を測定し, 周期加温下での生体の体温上昇反応を評価した. 【対象】健常ボランティア3例を総出力600Wにて麻酔の施行なしで加温した. 発熱体には8~10μmを中心と...

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Published in日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 19; no. 1; pp. 55 - 56
Main Author 下崎勇生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 2003
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ISSN0911-2529

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Summary:【目的】全身ハイパーサーミア(Whole Body Hyperthermia-WBH-)における癌治療は, 高体温による細胞障害に加えて, 血管内皮増殖因子など転移促進因子の熱による抑制反応2, 3)が注目されている. 我々は, 同治療方法の普及に向けて, より浸襲を少なくした生体加温法に取り組んでいる. 今回, 特異的な周期の加温によって体温調節の生理作用を抑制し, 無麻酔において全身加温を施した. またその時の皮膚温度と直腸温度を測定し, 周期加温下での生体の体温上昇反応を評価した. 【対象】健常ボランティア3例を総出力600Wにて麻酔の施行なしで加温した. 発熱体には8~10μmを中心とした赤外線を輻射する炭素線維(ダイリン社製)を用いて被験者の上下に設置し, FRP製カプセルで全体を覆った. 庫内の雰囲気温度を制御する為, 冷却ファンを設置した. プログラマブルチップ(PIC16F84A)により, 加温周期における出力と加温時間を, (80%60sec)-(60%180sec)-(0%60sec+Fan冷却)に制御した. 【結果】直腸温度(Rect)が38℃までは平均31分, 39℃までは平均56分で達した(Fig.1). 加温による苦痛は少なく, 血圧や心拍数の上昇は麻酔施行の際と同様のレベルに収まった. 温度上昇データの代表例をFig.2に示す. 39.5℃まで約80分で達した. 直腸温上昇率は, 現在のWBH治療時の0.08℃/分に対して0.05℃/分を得られた. 【結語】赤外線での全身加温において, 皮膚温度を上下させる周期加温による, 中枢温度の上昇挙動を確認した. 麻酔剤を用いず, 心拍数, 皮膚温, 血圧等は安全領域内で中枢温度が39.5度まで上昇した. 加温条件の周期的な制御によって, 麻酔を用いずに生体へのストレスを抑え, 中枢温を上昇させる可能性が示唆された. 【謝辞】加温に際し, 健常ボランティアの安全管理にご協力下さったルーククリニック殿に感謝いたします. 【参考】(1)竹内, 日本ハイパーサーミア誌12巻2号(平成8年), p.156 (2)Y. Sawaji, British Journal of Cancer(2002)86, P.1597 (3)T. Sato, Biochemical and biophysical research communiications 265(1999), p.189
ISSN:0911-2529