αアミノアルコールp-Boronophenylalaninol-10Bの硼素中性子捕捉療法における可能性

EL4腫瘍を移植したC57BLマウスとSCCVII腫瘍を移植したC3H/HeマウスにBrdUを5日間連続投与し, 腫瘍内の増殖期(P)細胞を標識した. その後, 中性子捕捉療法において従来使用されてきたp-Boronophenylalanine-10B(BPA)とSodium borocapatate-10B(BSH)並びに新規の硼素化合物p-Boronophenylalaninol-10B(BPA-ol)を腹腔内または経口投与し, 原子炉熱中性子線ビームを腫瘍に照射した. 他方, 一部の腫瘍は照射前30分間40℃で加温したり, 照射30分前にTPZを腹腔内投与したりして, 低温度温熱処置(M...

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Published in日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 17; no. suppl; p. 114
Main Authors 増永慎一郎, 小野公二, 切畑光統, 高垣政雄, 櫻井良憲, 木梨友子, 古林徹, 永澤秀子, 宇都義浩, 堀均
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 2001
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ISSN0911-2529

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Summary:EL4腫瘍を移植したC57BLマウスとSCCVII腫瘍を移植したC3H/HeマウスにBrdUを5日間連続投与し, 腫瘍内の増殖期(P)細胞を標識した. その後, 中性子捕捉療法において従来使用されてきたp-Boronophenylalanine-10B(BPA)とSodium borocapatate-10B(BSH)並びに新規の硼素化合物p-Boronophenylalaninol-10B(BPA-ol)を腹腔内または経口投与し, 原子炉熱中性子線ビームを腫瘍に照射した. 他方, 一部の腫瘍は照射前30分間40℃で加温したり, 照射30分前にTPZを腹腔内投与したりして, 低温度温熱処置(MTH)や生体還元物質Tirapazamine(TPZ)との併用効果を評価した. 照射後, 腫瘍を切離細切トリプシン処理し, 得られた単細胞浮遊液を細胞分裂阻止剤と共に2日間培養後, BrdUに対する免疫蛍光染色法でBrdU非標識腫瘍細胞(=照射時に休止期(Q)細胞)の微小核出現率を決定した. 同様に, 照射6時間後に得られた単細胞浮遊液を用いて, BrdUに対する免疫蛍光染色法でQ腫瘍細胞のアポトーシス出現率も決定した. 全腫瘍(P+Q)細胞の微小核とアポトーシス出現率は, BrdU非投与マウスの腫瘍から得られた. MTHもTPZも併用しない場合, BPA-olが最も顕著に, 特にP+Q細胞の, 各出現率を増加させた. しかし, BPAと同様, Q細胞とP+Q細胞との間の感受性の差異をBSH使用時の場合よりも拡大させた. MTHやTPZの併用は, BPA使用時と同様, この差異を顕著に縮小した. SCCVII細胞のアポトーシス出現率は極めて低く微小核出現率のみに基づいたが, EL4腫瘍の場合, 微小核出現率であろうとアポトーシス出現率であろうとこれらの結果は同じであった. MTHは各硼素化合物の腫瘍細胞への取り込みを多少増加させたが, TPZにはこの効果を認めなかった. 微小核出現率と同様にアポトーシス出現率も, 腫瘍内Q細胞の反応を選択的に検出する我々の手法に適応できた. BPA-olは, 中性子捕捉療法における硼素キャリアとして, 特にMTHやTPZの併用時には, 有望であると考えられた.
ISSN:0911-2529