S1-5 耳鼻咽喉科臨床の立場から 鼻科学を中心に

I. はじめに 日常臨床で我々が経験する頻度の高い症状の一つは, 疼痛である. この症状を治療し除去することは, 臨床家の第一の使命であることは言うまでも無い. しかしこの疼痛は, 精神的, 意思的要素が強く関与し, 程度に個人差を生じ, 他の感覚に比べて客観的に評価しにくい. 従ってその対処は, どうかすると間違った方向, すなわち鎮痛剤投与等の安易な方向のみに向けられることがある. 最近の薬剤の開発は目覚しく, 疼痛除去に極めて有効に作用し, これが治療側, また被治療側において一時的安心感をもたらし, 疼痛の発症の基になっている病態を見失う, あるいは発見を遅らす結果になることがある....

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Published in神奈川歯学 Vol. 41; no. 1; pp. 88 - 96
Main Authors 八尾和雄, 佐藤賢太郎, 臼井大祐, 青木由紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 2006
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Summary:I. はじめに 日常臨床で我々が経験する頻度の高い症状の一つは, 疼痛である. この症状を治療し除去することは, 臨床家の第一の使命であることは言うまでも無い. しかしこの疼痛は, 精神的, 意思的要素が強く関与し, 程度に個人差を生じ, 他の感覚に比べて客観的に評価しにくい. 従ってその対処は, どうかすると間違った方向, すなわち鎮痛剤投与等の安易な方向のみに向けられることがある. 最近の薬剤の開発は目覚しく, 疼痛除去に極めて有効に作用し, これが治療側, また被治療側において一時的安心感をもたらし, 疼痛の発症の基になっている病態を見失う, あるいは発見を遅らす結果になることがある. 特に悪性腫瘍の存在では, 有害刺激による生体組織の傷害を最小限にとどめる一つの警告信号と痛みを考えると, 単に疼痛を除くことは危険であり, むしろ疼痛が持続したとしてもその原因究明に全力を注ぐべきである(1). 一方, 疼痛を急性炎症の一症状と考えると, 鼻科学領域における疼痛を示す疾患は, 急性副鼻腔炎, しかも一側性副鼻腔(上顎洞)炎として受診してくることがほとんどである.
ISSN:0454-8302