CAIにおける知的能力のシミュレーション
CAI (Computer-assisted Instruction)は, 1950年代の末から主として米国において研究および実用が開始された. その後, 60年代は実用と普及に関心が持たれ, CAIのための教育プログラム(Cource ware)も数多く開発された. しかし, この世代のCAIには根本的な問題点が未解決のまま残されていた. その最たるものはCource wareの開発に膨大なエネルギーを必要とすることである. しかしこの問題点は現象的なもので, 本質的な問題は, CAIのC (Computer)の能力を十分生かさず, 労力をプログラム開発者に転嫁していることにある. この世代...
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Published in | 行動計量学 Vol. 4; no. 1; p. 76 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本行動計量学会
1976
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Summary: | CAI (Computer-assisted Instruction)は, 1950年代の末から主として米国において研究および実用が開始された. その後, 60年代は実用と普及に関心が持たれ, CAIのための教育プログラム(Cource ware)も数多く開発された. しかし, この世代のCAIには根本的な問題点が未解決のまま残されていた. その最たるものはCource wareの開発に膨大なエネルギーを必要とすることである. しかしこの問題点は現象的なもので, 本質的な問題は, CAIのC (Computer)の能力を十分生かさず, 労力をプログラム開発者に転嫁していることにある. この世代(第1世代と呼ぶ)においては, 教材を分析して細分割し, これら小部分の提示の順序までを規定(プログラム化)して計算機に与えなければならない. さらに学習者に適応するプログラムにしようと思うと. 学習者の応答の仕方によって, 小部分提示の順番を変更する仕方まで記述する必要がある. これはきわめて繁雑な作業となる. 第1世代のもう一つの問題点は, 計算機が教授過程の主導権を絶えず持っていることにあり, 学習者の質問に対して柔軟に対処することができない. 60年代の末になると, 第2世代のCAIの研究および実用化が開始された. その特徴は, 端的にいえば, 人間の問題解決および学習の能力のモデル(シミュレーション)を持っていることである. もちろんそのモデルは人間ほど複雑かつ高度なものではないが, しかしこのモデルを持つことによって, 実用的にはCAIの能力の向上およびCAIプログラム作りの大幅な労力削減が可能になり, また, 理論的にも仮説の設定一→その検証, というオーソドックスな手法による人間の知的能力の解明の研究手段を与えることになる. 第2世代におけるCAIで提案された各種のモデルおよびその問題点について展望する. |
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ISSN: | 0385-5481 |