はじめに

アレルギー疾患は遺伝病ではないのか?アレルギー疾患, すなわちI型アレルギー反応に基づくアトピー疾患は毎年増加している. 普遍的抗原に対する特異的IgE抗体が証明されるということで定義されるアトピー素因を有する者すなわち, ダニやスギに対する特異的IgE抗体保有者の割合は我が国において, 1960年代中頃には, 数%であったと推測されている. そして, 1970年代後半には20%, 1990年代前半には40%という統計結果が報告1)され, 1998年には20代の青年においては70%に到達したらしい. 20年くらいの時間差を考えると経済成長の伸びや乳幼児死亡率の低下とも一致する. このような統計...

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Published in医療 Vol. 54; no. 2; pp. 55 - 57
Main Author 斎藤博久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立医療学会 2000
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ISSN0021-1699

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Summary:アレルギー疾患は遺伝病ではないのか?アレルギー疾患, すなわちI型アレルギー反応に基づくアトピー疾患は毎年増加している. 普遍的抗原に対する特異的IgE抗体が証明されるということで定義されるアトピー素因を有する者すなわち, ダニやスギに対する特異的IgE抗体保有者の割合は我が国において, 1960年代中頃には, 数%であったと推測されている. そして, 1970年代後半には20%, 1990年代前半には40%という統計結果が報告1)され, 1998年には20代の青年においては70%に到達したらしい. 20年くらいの時間差を考えると経済成長の伸びや乳幼児死亡率の低下とも一致する. このような統計結果や実験結果を総合すると, アレルギー疾患増加の原因として, 免疫系が未発達な乳幼児における細菌(広域抗生物質の濫用)やウィルス(少子化によるこども同士の接触の減少)による感染機会の減少という説が最も有力である.
ISSN:0021-1699