20.有資格按摩マッサージ師と学習途上者による按摩施術の心身におよぼす影響の違い
[目的]昨年の本学会で, 40分間の按摩療法はベッド上での休息と異なり, 肩こりの自覚症状と状態不安を有意に低下させることを報告した. 今回は施術者の経験や習熟度の違いによりこれらの効果に差があるかを検討した. [方法]対象は慢性的に肩こりを自覚する健康女性50歳代10人を募集し, 4回の介入を行った. 介入は, 本学にて鍼灸手技療法を専攻している大学1年(9ヶ月の教育), 2年(21ヶ月の教育), 17年の経験を持つ按摩師による40分間の全身按摩施術と, 施術を行わないベッド上での休息である. 施術を行う大学生は学内で各学年5人ずつ募集した. 按摩師は1名. 介入前後にVisual Anal...
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Published in | 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 70; no. 1; p. 33 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本温泉気候物理医学会
2006
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Summary: | [目的]昨年の本学会で, 40分間の按摩療法はベッド上での休息と異なり, 肩こりの自覚症状と状態不安を有意に低下させることを報告した. 今回は施術者の経験や習熟度の違いによりこれらの効果に差があるかを検討した. [方法]対象は慢性的に肩こりを自覚する健康女性50歳代10人を募集し, 4回の介入を行った. 介入は, 本学にて鍼灸手技療法を専攻している大学1年(9ヶ月の教育), 2年(21ヶ月の教育), 17年の経験を持つ按摩師による40分間の全身按摩施術と, 施術を行わないベッド上での休息である. 施術を行う大学生は学内で各学年5人ずつ募集した. 按摩師は1名. 介入前後にVisual Analogue Scaleによる自覚症状の強さ, 状態-特性不安尺度日本語版による状態不安, 唾液中コルチゾルと分泌型IgAを測定した. 今回は4回の介入全てを受けることができた8人の対象を分析した. 統計処理の有意差は危険率5%とした. [結果]介入の前後で比較すると, 肩こりの自覚症状は大学1年と按摩師の施術の後に有意な低下がみられた. 状態不安はいずれの介入でも有意な低下がみられた. 唾液中コルチゾル値は按摩師の施術後に有意な低下がみられた. 分泌型IgA値は大学1年, 2年, 按摩師のいずれによる施術でも有意な増加がみられた. 次に, 介入前の値を100として, 介入後の値を求め, 各介入間で比較した(フリードマン検定後, 多重比較). その結果, 肩こりの自覚症状の値は按摩師の施術が他群と比較して有意に小さかった. 状態不安は, 按摩師の施術が休息と比較して有意に小さかった. [結論]按摩施術は肩こりの自覚症状や不安感を有意に軽減させ, 免疫機能に影響を及ぼすことが示唆された. 特に, 経験豊かな按摩師の施術は学習途上である大学生の施術や休息とは異なり, 心身の改善の度合いが大きかった. また, 経験豊かな按摩師の施術では, 唾液中コルチゾルが有意に低下しており, 体表からの刺激が視床下部-下垂体-副腎皮質系を介してストレスの緩和に関与することが示唆された. |
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ISSN: | 0029-0343 |