30. 温泉医学トランスレーショナルリサーチのための知識インフラストラクチャー

• Published in: 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 68; no. 1; p. 46
• Main Authors: 中谷純, 大塚吉則, 佐々木浩二, 阿岸祐幸
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 日本温泉気候物理医学会 2004
• ISSN: 0029-0343

[目的] 現代医学, 温泉医学, ゲノム科学の橋渡支援研究を温泉医学トランスレーショナルリサーチと位置付け, そのために必要なIT上の知識処理手法に関する基本理念と一部試作について報告する. [方法] ポストゲノム研究における知識アーキテクチャーの一つであるEBKA(Evidence Based Knowledge Architecture)を拡張利用し, 温泉医学, 現代医学, ゲノム科学を融合するための基本的知識をIT上に構築する. 知識は, 知識単位という論理的単位を元に記述し, 各知識の情報の質はEBMで用いられる評価表を改修した表で評価する. ミクロからマクロにいたる論理的拡張解剖学的階層構造(LEAHS)に基づく知識構造を単一の基本インデックスとし, 多学際的な知識を統一的基準でまとめる. [評価] プロトタイプ知識およびブラウザを鉄代謝をテーマとして作成し, 手法の有効性を検証した. [結果] IT上に温泉医学, 現代医学, ゲノム科学を統一基準で融合した基本的な知識構造構築手法を考案し, プロトタイプを鉄代謝をテーマとして作成した. LEAHSは, 作成した多学際的な知識の全範囲において論理的な連続一貫性を持ち, 温泉医学, 現代医学, ゲノム科学の統一基準として有効である事が確認できた. 証拠を含む知識単位記述とEBMに基づく評価手法は, 作成知識の客観的評価性と信頼性を高める上で有効であった. [結論と考察] 温泉医学, 現代医学, ゲノム科学を有機的にIT上で融合し双方向の知識移行を可能とすることは, 治療の選択肢を広げ臨床QOLをあげることにつながる. EBMを導入し知識の根拠と質を明確にすることは, 玉石混合の温泉医学を正しく整理することにつながり, より科学的な温泉医学の推進を支援できる. 医療費削減の中, 統合知識を用いた予測を通じて疾病予防, 健康維持を科学的に行うことは, 非特異性変調作用を有する温泉医学の進むべき有力な道の一つであると期待される.