「がん疼痛に対する薬物療法 (鎮痛薬・医療用麻薬・鎮痛補助薬) - 現状とピットフォール - 」によせて

日本人において40歳から89歳における死因の第1位はがんであり, 2人に1人ががんになり3人に1人はがんで死ぬことが知られており, がんは特別な病気ではなくなってきている. しかし, がんには身体的・精神的なさまざまな症状が伴うことからトータルペインとしてとらえる必要がある. 中でも, がん患者の約70%が疼痛を経験するとされており, その結果ADLを制限しQOLを損なうリスクとなるため疼痛のコントロールは非常に重要な問題である. がん疼痛の原因としては(1)がんに由来する疼痛, (2)治療に由来する疼痛, (3)二次的疼痛, (4)心因性疼痛があり対応に苦慮することもあるが, 正確な診断・評...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 37; no. 3; p. 354
Main Authors 竹中元康, 山田圭輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 15.05.2017
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Summary:日本人において40歳から89歳における死因の第1位はがんであり, 2人に1人ががんになり3人に1人はがんで死ぬことが知られており, がんは特別な病気ではなくなってきている. しかし, がんには身体的・精神的なさまざまな症状が伴うことからトータルペインとしてとらえる必要がある. 中でも, がん患者の約70%が疼痛を経験するとされており, その結果ADLを制限しQOLを損なうリスクとなるため疼痛のコントロールは非常に重要な問題である. がん疼痛の原因としては(1)がんに由来する疼痛, (2)治療に由来する疼痛, (3)二次的疼痛, (4)心因性疼痛があり対応に苦慮することもあるが, 正確な診断・評価を行った上でWHO方式に則った鎮痛治療を的確に行うことにより, その80%が疼痛緩和されるとされている. 現在, がん疼痛の治療としては薬物療法・intervention治療・リハビリ治療・心理学的治療・統合的治療などがあるが, あくまでも薬物治療が疼痛治療の主役であり, 非オピオイド系鎮痛薬やオピオイドの使用方法に精通しておくことは非常に重要である. また, がん疼痛におけるオピオイドの有用性は広く認められているが, それでもコントロールできない痛みがあることも現実であり, その際には鎮痛補助薬の使用が重要な位置を占めることとなるため, 併せて知識を持っておく必要がある. 日常臨床において, 麻酔科医・ペインクリニック科医は上記の薬物に関して精通しているとして他科の医師よりアドバイスを求められることもしばしばである. したがって, 今回のシンポジウムではこれらの点を踏まえがん疼痛に対する薬物療法において, 非オピオイド鎮痛薬, 持続痛に対するオピオイド鎮痛薬, 突出痛に対するオピオイドレスキュー薬, 鎮痛補助薬についてそれぞれの薬物の特徴および使用方法におけるポイントなどを論じていただいた. 限られた時間の中ではあるが充実した内容の発表となっており, 疼痛治療にたずさわる医師にとって今後の診療に役に立つ貴重な知見を得ることができたと考える.
ISSN:0285-4945