日本臨床麻酔学会第35回大会シンポジウム 「医療法改正による院内事故調査委員会の在り方・進め方・問題点を考える」によせて

いわゆる改正医療法が2014年6月25日に公布され, 2015年10月1日から施行された直後に日本臨床麻酔学会でのシンポジウムが開催されました. この時点では医療事故調査制度は手探り状態であり, どのくらいの報告と調査が実際に行われるかも不明のままでした. そのような中で支援団体として日本医師会の立場から今村聡先生に, また法律家としての立場から加藤愼先生からご講演を頂きました. こうして始まった医療事故調査制度による報告は開始1年間(2016年10月)で388例であり, これが少ないのか適正であるのかは判断が難しいところであります. 日本医療安全調査機構としては医学的視点を踏まえて中立的な調...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 37; no. 2; p. 238
Main Author 白石義人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 15.03.2017
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Summary:いわゆる改正医療法が2014年6月25日に公布され, 2015年10月1日から施行された直後に日本臨床麻酔学会でのシンポジウムが開催されました. この時点では医療事故調査制度は手探り状態であり, どのくらいの報告と調査が実際に行われるかも不明のままでした. そのような中で支援団体として日本医師会の立場から今村聡先生に, また法律家としての立場から加藤愼先生からご講演を頂きました. こうして始まった医療事故調査制度による報告は開始1年間(2016年10月)で388例であり, これが少ないのか適正であるのかは判断が難しいところであります. 日本医療安全調査機構としては医学的視点を踏まえて中立的な調査を行うことが必要であり法的責任の有無に関する分析は不要としています. また実際, 各都道府県の医師会がまとめ役となって地域の大学病院や基幹病院と連携を取り支援体制作りをしているのも事実です. 医師会の体制や運用方法, 法律的な考え方や問題点など現時点でも示唆に富む内容となっております. 医療事故調査制度のノウハウを知る以上に, 今村先生の結論で書かれている「患者, 国民との信頼に基づいた, 医師・患者関係の構築. 医療事故から教訓を学び, 再発防止を図り, ひいては医療の質を高めるのは当然であるが, これを通じて "対立" 関係ではなく, "対話" による医師・患者関係を目指すことが究極の目的」とされていることが極めて重要な点と思われます. また, 加藤先生が述べている「医療安全の向上ひいては医療そのものの進歩に資するものでなくては社会的な使命を果たすことにはならない」ことを医療者として肝に銘じなくてはならないと考えます. 麻酔科医として, 医療者としてどのように医療事故調査制度に関わり, 活用していくかが今後ますます求められていくと思います.
ISSN:0285-4945