被殻, 視床出血における機能予後の差異とそれに影響する因子の比較:併存疾患・合併症も含めて

〈目的〉脳出血の機能予後については多くの報告がある. しかし急性期から退院まで同じ病院で一貫したリハ治療が行われた上でのデータは少ない. 今回我々は, 発症後急性期からリハゴールに至るまで治療を継続した脳出血例の機能予後を被殻, 視床病変で比較した. 〈方法〉対象は視床出血63名, 被殻出血138名の計201名(平均57歳)で, 男性122名, 女性79名. 後方視的に画像所見, 身体所見, 併存疾患尺度(Liu et al, 1997), 退院時 Barthel Index(BI), 退院時歩行レベル(屋外歩行自立~車椅子介助レベルまで4段階に分類), 転帰先などを調査の上, 病変別に比較し...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 38; no. suppl; p. S157
Main Authors 豊倉穣, 田中博, 安里隆, 古野薫, 山口健, 児玉三彦, 石田暉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 2001
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Summary:〈目的〉脳出血の機能予後については多くの報告がある. しかし急性期から退院まで同じ病院で一貫したリハ治療が行われた上でのデータは少ない. 今回我々は, 発症後急性期からリハゴールに至るまで治療を継続した脳出血例の機能予後を被殻, 視床病変で比較した. 〈方法〉対象は視床出血63名, 被殻出血138名の計201名(平均57歳)で, 男性122名, 女性79名. 後方視的に画像所見, 身体所見, 併存疾患尺度(Liu et al, 1997), 退院時 Barthel Index(BI), 退院時歩行レベル(屋外歩行自立~車椅子介助レベルまで4段階に分類), 転帰先などを調査の上, 病変別に比較した. 〈結果〉退院時BI, 転帰先は被殻, 視床出血群間で差を認めなかったが, 退院時歩行能力は前者の方が良好であった. 被殻出血では年齢が若い, 併存疾患・合併症が少ない, 脳室穿破の頻度が少ない, などの傾向がみられた. 入院時意識レベルは両群間で差がないものの, 視床病変ではリハ初診後1ヶ月の時点でも意識障害を呈する症例が多かった. 下肢麻痺は両群ほぼ同等であった. 〈結論〉視床出血の予後が不良であることは既に報告されており, 本研究も同じ結果であった. その要因の一つに視床出血例での全般的脳代謝の低下を挙げる研究もある. リハ開始後1ヶ月時の意識レベルの相違はこの知見を支持するものと考えられた. さらに年齢の影響と思われる併存疾患・合併症の問題も予後に少なからず影響している可能性が示唆された.
ISSN:0034-351X