幼児期に軽度の発達遅滞を示す児の臨床経過

発達遅滞児が示す学童期の言語, 行動, 知的特徴から, 経時的変化に対応した療育指針を検討することを目的とした. 軽度の発達遅滞で受診した幼児のうち, 脳性麻痺, てんかん, 極低出生体重児, 染色体異常, 他の器質的疾患, IQ50未満を除外し, 学童期まで観察できた35例(男性21, 女性14), 初診時月齢36.5±8.9ヵ月を対象とした. 1例を除き普通学級に在籍していた. 定期的診察・指導, 遠城寺式, WISC-R・WPPSIを全例に, 他の発達検査, 医学的検査を一部に施行した. 学童期の状況は両親にアンケートを依頼し19例から回答を得た. 受診理由は言葉の遅れ22, 言葉+運動...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 12; p. 981
Main Authors 岡田祐輔, 高橋和俊, 乾実花, 広野日善, 小林恵子, 松尾多希子, 山田和孝, 長博雪, 松井晨, 舟橋満寿子, 鈴木康之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1999
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Summary:発達遅滞児が示す学童期の言語, 行動, 知的特徴から, 経時的変化に対応した療育指針を検討することを目的とした. 軽度の発達遅滞で受診した幼児のうち, 脳性麻痺, てんかん, 極低出生体重児, 染色体異常, 他の器質的疾患, IQ50未満を除外し, 学童期まで観察できた35例(男性21, 女性14), 初診時月齢36.5±8.9ヵ月を対象とした. 1例を除き普通学級に在籍していた. 定期的診察・指導, 遠城寺式, WISC-R・WPPSIを全例に, 他の発達検査, 医学的検査を一部に施行した. 学童期の状況は両親にアンケートを依頼し19例から回答を得た. 受診理由は言葉の遅れ22, 言葉+運動の遅れ5, 運動の遅れ2, 構音異常, 会話困難各3例, 幼児期の診断はMR10, 広汎性発達障害14, ADHD4, コミュニケーション障害7例であった. 対人関係の遅れは19例にみられ, 改善するがマイペースな傾向を残すものが多かった. 全般的な遅れのある例を除きIQの上昇がみられた. 広汎性発達障害では知的に著明に改善する例があった. VIQ,PIQはV=P12例, V<P22例, V>P1例, 幼児期のDQ,IQが<70の例で有意にVP差が大きかった. 対人関係, 集中, 話し言葉などの幼児期の問題は軽減するものの, 学童期にその特徴を残す傾向があった. IQがよい例でも言語性の問題は高率にみられ, 学習障害と診断可能な例もあった. 学校とも適宜連携しながら社会適応や行動面にも配慮した指導, 経過観察を行う必要がある.
ISSN:0034-351X