頸髄損傷患者の手に発生した腫脹および疼痛

「目的」これまで報告例の少ない受傷後早期の頸髄損傷患者の手に発生する腫脹と疼痛について検討したので報告する. 「方法」対象は, 当科および関連病院で治療を行った頸髄損傷患者(全例非骨傷性で不全麻痺例)77例のうち, 受傷後早期に手の腫脹をきたした13例(全例男性)で, 受傷時平均年齢は55歳である. 検討項目は疼痛の合併と症状の経過, 両手の三相骨シンチグラフィー所見, 両手掌のサーモグラフィー所見, およびDEXA法による橈骨遠位端5mm幅の骨密度値である. 「結果」手の腫脹は11例が片側性に, 2例が両側性に出現した. 手の腫脹に一致する疼痛を9例に認めたが, このうち3例は非常に強い疼痛...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 12; p. 932
Main Authors 岡史朗, 辻伸太郎, 森諭史, 乗松尋道, 田中聡, 山田英司, 江村武敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1999
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Summary:「目的」これまで報告例の少ない受傷後早期の頸髄損傷患者の手に発生する腫脹と疼痛について検討したので報告する. 「方法」対象は, 当科および関連病院で治療を行った頸髄損傷患者(全例非骨傷性で不全麻痺例)77例のうち, 受傷後早期に手の腫脹をきたした13例(全例男性)で, 受傷時平均年齢は55歳である. 検討項目は疼痛の合併と症状の経過, 両手の三相骨シンチグラフィー所見, 両手掌のサーモグラフィー所見, およびDEXA法による橈骨遠位端5mm幅の骨密度値である. 「結果」手の腫脹は11例が片側性に, 2例が両側性に出現した. 手の腫脹に一致する疼痛を9例に認めたが, このうち3例は非常に強い疼痛を訴え, 反射性交感神経ジストロフィー(RSD)と診断した. RSD3例を含めた6例に交感神経ブロックを行い4例は軽快したが, RSDの2例は疼痛が残存した. 三相骨シンチグラフィーは, 受傷後4ヵ月までの早期に9例撮像を行ったが, 腫脹側の異常集積像を第1相:7例, 第2相:8例, 第3相:6例に認めた. 手掌部のサーモグラフィー所見は, 受傷後2ヵ月以内の早期に撮影した片側腫脹例の5例全例が非腫脹側と比べ高温を呈した. 橈骨遠位端の骨密度は, 非腫脹側の平均0.296g/平方センチメートルに対し, 腫脹側では平均0.259g/平方センチメートルと低い傾向にあった. 「結論」頸髄損傷の受傷後早期に, 手の腫脹と疼痛が出現した場合には, RSDを念頭に置いた検索と治療が必要である.
ISSN:0034-351X