Aud. & Visual P 300による半側空間無視患者の客観的評価

【目的】左半側空間無視(USN)患者の左右の耳あるいは左右の視野に刺激を呈示して得られたP 300を検討するとともに, P 300がUSNの客観的指標になりうるかを検討した. 【対象】全例右中大脳動脈領域の血管障害とした. USN(+)群(軽度群6名, 中~重度群7名), USN(-)群23名とした. 各群間で年齢および長谷川式知能検査に有意差はなかった. 【方法】Aud. P 300は日本脳波筋電図学会指針に準じた. Visual P 300は左半側空間検査では目標刺激に[xo](出現率20%), 非目標刺激に[oo](出現率80%)を1 m離れた21インチのTVに無作為な順序で2秒ごとに呈...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 30; no. 12; p. 947
Main Authors 音成龍司, 片伯部裕次郎, 岩橋徳二, 山内豊明, 安藤則行, 百田耕, 矢野二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1993
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Summary:【目的】左半側空間無視(USN)患者の左右の耳あるいは左右の視野に刺激を呈示して得られたP 300を検討するとともに, P 300がUSNの客観的指標になりうるかを検討した. 【対象】全例右中大脳動脈領域の血管障害とした. USN(+)群(軽度群6名, 中~重度群7名), USN(-)群23名とした. 各群間で年齢および長谷川式知能検査に有意差はなかった. 【方法】Aud. P 300は日本脳波筋電図学会指針に準じた. Visual P 300は左半側空間検査では目標刺激に[xo](出現率20%), 非目標刺激に[oo](出現率80%)を1 m離れた21インチのTVに無作為な順序で2秒ごとに呈示した. 右半側空間検査は右視野にXが呈示される以外同様とした. 【結果】Aud. P 300の潜時はUSN(+)群520±105 msec, USN(-)群436±71 msecで, USN(+)群にP 300潜時の延長を認めた. 8名に左右別々の耳に呈示して得られたP 300潜時・振幅に有意差はなかった. 中~重度群のP 300潜時は軽度群に比し延長していた(p<0.05). Visual P 300に関して, 左視野刺激においてUSN(+)群563±77 msec, USN(-)群471±51 msecであり有意差を認めた. 右視野刺激ではUSN(+)群521±57 msec, USN(-)群479±43 msecであり, その傾向がみられた. 【考察および結語】P 300は注意力, 短期記憶と関係が深いといわれている. 今回, 聴覚・視覚刺激ともにP 300潜時の延長がみられたことから, USNの患者にはHeilmanらの仮説の一つであるinattentional hemispatial memory説を支持するとともに全般性の障害もあると考えられた. さらに聴覚刺激で左右の耳で有意差がなかったことから, 患側からの呼びかけに応答が悪いという症状は聴覚よりも視覚の影響が強いと考えられた.
ISSN:0034-351X