P207 男子大学柔道選手における強化合宿中のビタミンC摂取が好中球機能に及ぼす効果について
【目的】我々は大学柔道部に所属する男子選手を対象に, 強化合宿期の稽古実施による身体的疲労の出現とこれに対するビタミンC摂取の効果を好中球機能から検討した. 【方法】対象は, 大学柔道部に所属する男子選手22名であった. 全対象者のうち12名に合宿期間中1日1500mgの顆粒ビタミンCを摂取した対象者をビタミンC摂取群(VC群), 摂取しなかった者10名を対照群とした. 本調査は, 通常練習期及び合宿前後の同一運動負荷前後の計3回実施した. 対象者に実施させた同一運動負荷はウォーミングアップ, 打ち込み, 乱取り, クーリングダウンによって構成された2時間の稽古であった. なお, 合宿中の運動...
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Published in | 日本衛生学雑誌 Vol. 62; no. 2; p. 531 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本衛生学会
2007
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Summary: | 【目的】我々は大学柔道部に所属する男子選手を対象に, 強化合宿期の稽古実施による身体的疲労の出現とこれに対するビタミンC摂取の効果を好中球機能から検討した. 【方法】対象は, 大学柔道部に所属する男子選手22名であった. 全対象者のうち12名に合宿期間中1日1500mgの顆粒ビタミンCを摂取した対象者をビタミンC摂取群(VC群), 摂取しなかった者10名を対照群とした. 本調査は, 通常練習期及び合宿前後の同一運動負荷前後の計3回実施した. 対象者に実施させた同一運動負荷はウォーミングアップ, 打ち込み, 乱取り, クーリングダウンによって構成された2時間の稽古であった. なお, 合宿中の運動実施状況は通常練習期の約3倍となる6時間の練習を実施していた. 身体組成値は体重, 体脂肪率, 除脂肪体重を測定した. また, 各調査時の練習前後に約15mlの採血を行い, 血液生化学検査及び好中球活性酸素(ROS)産生量及び貧食量, 血清オプソニン化活性値を測定した. さらに, 合宿中の栄養摂取状況を調査した. 【結果及び考察】合宿中の総エネルギー摂取量は両群間で有意な差はなかった. VC群・対照群の合宿前の稽古前の血清ビタミンC濃度は有意な差はなかったが, VC群の合宿後の稽古前値は合宿前の値及び同時期の対照群のものより有意に高くなっていた. 全調査時に稽古後の筋逸脱酵素値が有意に上昇し, 稽古後筋組織の変性や損傷が示唆された. また, 合宿後の稽古前値は他の調査時より高値を示し, 合宿中の対象者に慢性的筋疲労が出現していた可能性があると考えられた. VC群では合宿後の稽古前後のLDHの上昇率が通常練習期のものより有意に低く, またこれが合宿後の対照群のものより低くなっていた. 同様の傾向がCKの変化率においても観察された. すなわち, これは合宿後VC群では通常練習期や合宿前に比べ稽古後に筋組織が変性・崩壊され難い状況となっていたと考えられた. 全調査時で白血球数, 好中球数, 免疫グロブリン, 補体が稽古後上昇し, 稽古が, 筋組織を変性・損傷させ, これに対する抗炎症反応としてこれらの血液成分が変性・損傷した部位に動員されていたことが示唆された. 合宿後のこれらの稽古前値は, 通常練習期や合宿前の値より低値を示し, これらの成分が合宿中に活発に動員, 消費され, 低値となっていた可能性があると考えられた. なお, この項目において両群間で有意な差はなかった. 調査期間を通じROS産生量, オプソニン化活性値は稽古後有意に上昇し, 貧食量は有意に低下した. すなわち, 稽古後のROS産生量とオプソニン化活性値の上昇は, 稽古が筋組織の変性・損傷をもたらし, これに対する抗炎症反応がこれらの機能を亢進させたと考えられた. また, 稽古後の貧食量の低下は, 運動に伴う疲労等のストレスがこの機能を低下させる可能性を示唆した. 一方, 両群ともに合宿後の稽古前のこれらの値はいずれも通常練習期のものより低く, 合宿中にこれらの機能が低下する可能性があることが示唆された. 一方, VC群の合宿後の稽古前後のROS産生量の上昇率は, 通常練習期や合宿前のものより大きく, 運動負荷に対するROS産生能の亢進が合宿後でより顕著に現れる傾向がみられた. また, 対照群では, 合宿後の稽古前後の食食量の低下率は, 合宿前のものより大きく, 通常練習期や合宿後に比べ合宿後の稽古後にこの機能の低下が大きくなる可能性がみられた. すなわち, この結果は合宿中ビタミンを摂取したVC群では, 対照群に比べ, 運動負荷に対するROS産生能の亢進が大きく, またこれによる貧食能の低下が抑制されている可能性を示唆していた. |
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ISSN: | 0021-5082 1882-6482 |