眼科におけるステロイド治療

サルコイドーシスはわが国のぶどう膜炎の原因疾患の中で常に上位3位に入る疾患であり, 増加傾向にある. 近年, サルコイドーシスの病因, 病態の解明は進みつつあるが, 治療に関しては眼科医の間でも統一した見解はない. サルコイドーシスによるぶどう膜炎にもステロイド薬が有効であることは明らかだが, 全身投与がどの症例で適応となるかにはじまり, 投与量や方法, 期間については症例ごとに手探りの状態である. 今回「サルコイドーシスの治療ガイドライン」を作成するにあたり, ぶどう膜炎を専門としている眼科施設に, 治療に対する考え方および実際の治療法についてのアンケートを配布させていただいた. その結果を...

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Published inサルコイドーシス/肉芽腫性疾患 Vol. 20; no. 2; p. 34
Main Author 石原麻美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会 2000
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ISSN1345-0565

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Summary:サルコイドーシスはわが国のぶどう膜炎の原因疾患の中で常に上位3位に入る疾患であり, 増加傾向にある. 近年, サルコイドーシスの病因, 病態の解明は進みつつあるが, 治療に関しては眼科医の間でも統一した見解はない. サルコイドーシスによるぶどう膜炎にもステロイド薬が有効であることは明らかだが, 全身投与がどの症例で適応となるかにはじまり, 投与量や方法, 期間については症例ごとに手探りの状態である. 今回「サルコイドーシスの治療ガイドライン」を作成するにあたり, ぶどう膜炎を専門としている眼科施設に, 治療に対する考え方および実際の治療法についてのアンケートを配布させていただいた. その結果を参考に, 眼科におけるステロイド治療の基本方針を明らかにすることを目的とした. アンケート結果によると, ステロイド治療導入の理由としては, (1)硝子体混濁, (2)網膜血管炎, (3)脈絡網膜炎が最も多かった. ステロイド投与法としては, 95%の症例が連日投与で, 75%が40mgまたは30mgを初期量としていた. 治療導入までの期間は, 1/2以上が初診から1ヶ月以内, 約1/3が半年以上たってから治療を開始していた. ステロイド投与期間は(1)1~3年と(2)6ヶ月~1年が最も多かった. 治療効果は約半数が軽快, 20%が不変, 9%が消炎, 6%が悪化であった. しかし25%の症例が6ヶ月後に, 20%が1年後に再燃していた. 眼科におけるステロイド全身投与の適応は視機能を不可逆的に障害する可能性のある病変であり, 基本的にはステロイド点眼薬または眼注などの局所治療を行う. つまり軽度の眼底病変や, 炎症が前眼部に限局している場合は全身投与の適応にはならないと考えられる. 投与方法としては, 初期量30-40mgからの連日投与で, 少なくとも半年から1年以上かけて漸減していくという方法が一般的であった. しかしながら, 眼病変は数年~十数年持続することが多く, 慢性炎症に伴う合併症にはステロイド無効例や再燃例も少なくない. ステロイド投与方法もふくめ, ステロイド薬以外の治療についても今後の検討課題である.
ISSN:1345-0565