肺瘻閉鎖術後に脳空気塞栓症を合併した症例 脳空気塞栓症 胸部手術後

肺切除術後の肺瘻に対して肺瘻閉鎖術を施行し, 術後に多量の脳空気塞栓と冠動脈空気塞栓によると思われる心電図変化を認めた症例を経験したので報告する. (症例)76才 男性 (既往歴)H13 胃切除術(経過)H14.4.24 右下葉肺癌に対して胸腔鏡下肺切除術を施行した. 術中, 術後の呼吸,循環動態に著変を認めなかった. 術後, 肺瘻が持続したため5.7肺瘻閉鎖術を施行した. 麻酔からの覚醒が良好である事を確認した後抜管し帰室した. 帰室3時間後, 意識レベルの低下(JCS 300), 呼吸減弱, 眼球上方偏位を認めたため, 直ちに気管挿管し頭部CT撮影を行った. 両側大脳半球皮質下に多量の空気...

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Published in蘇生 Vol. 21; no. 3; p. 229
Main Authors 内海陽子, 楠戸和仁, 小松達彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 2002
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ISSN0288-4348

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Summary:肺切除術後の肺瘻に対して肺瘻閉鎖術を施行し, 術後に多量の脳空気塞栓と冠動脈空気塞栓によると思われる心電図変化を認めた症例を経験したので報告する. (症例)76才 男性 (既往歴)H13 胃切除術(経過)H14.4.24 右下葉肺癌に対して胸腔鏡下肺切除術を施行した. 術中, 術後の呼吸,循環動態に著変を認めなかった. 術後, 肺瘻が持続したため5.7肺瘻閉鎖術を施行した. 麻酔からの覚醒が良好である事を確認した後抜管し帰室した. 帰室3時間後, 意識レベルの低下(JCS 300), 呼吸減弱, 眼球上方偏位を認めたため, 直ちに気管挿管し頭部CT撮影を行った. 両側大脳半球皮質下に多量の空気による透亮像を認め, 脳空気塞栓症の疑いにてICUに入室した. 入室後の心電図にて, II, III, aVFに ST上昇を認め, 冠動脈空気塞栓による下壁梗塞が疑われた. 翌日の頭部CTでは脳梗塞と著明な脳浮腫を認めた. 入室後, 昇圧剤, 脳保護剤等の対症療法を行ったが症状改善せず, 5.10死亡した. (考察)脳空気塞栓症は体外循環後, 坐位手術, 肺生検後, 胸部手術, 外傷などが原因となって発生する. 肺損傷後の空気塞栓発生機序は, 肺損傷によって気管支と肺静脈の間に瘻孔が生じ, 血管内へ空気が流入し大循環へ到達するとされている. 本症例では, それに加えて陽圧換気による気道内圧の上昇, 出血などによる肺静脈圧低下なども要因となって空気塞栓症を惹き起こしたと考えられる.
ISSN:0288-4348