術中心停止を認めた一例 心停止 硬膜外麻酔 Bezold-Jarisch反射

今回我々は, 硬膜外麻酔併用の全身麻酔中に, 高度徐脈から一過性の心停止を来した症例を経験したので報告する. 【症例】54歳, 女性. 152cm, 67kg. 子宮筋腫のため, 腹式子宮全摘術が予定された. 小児喘息, 脳梗塞の既往があり, 高血圧症はコントロール良好であった. 術前検査では心電図, 胸部X線, 生化学検査等に異常を認めなかった. 【経過】前投薬として手術室入室30分前にミダゾラム3mgを筋注投与した. 腰椎1/2より上向き5cmに硬膜外カテーテルを挿入留置し, 2%リドカイン3mlを試験投与し, 異常のないことを確認のうえ, プロポフォール, ベクロニウムにて導入した. 手...

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Published in蘇生 Vol. 21; no. 3; p. 222
Main Authors 諏訪一郎, 奥田隆彦, 二川晃一, 蔵昌宏, 木村誠志, 古賀義久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 2002
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Summary:今回我々は, 硬膜外麻酔併用の全身麻酔中に, 高度徐脈から一過性の心停止を来した症例を経験したので報告する. 【症例】54歳, 女性. 152cm, 67kg. 子宮筋腫のため, 腹式子宮全摘術が予定された. 小児喘息, 脳梗塞の既往があり, 高血圧症はコントロール良好であった. 術前検査では心電図, 胸部X線, 生化学検査等に異常を認めなかった. 【経過】前投薬として手術室入室30分前にミダゾラム3mgを筋注投与した. 腰椎1/2より上向き5cmに硬膜外カテーテルを挿入留置し, 2%リドカイン3mlを試験投与し, 異常のないことを確認のうえ, プロポフォール, ベクロニウムにて導入した. 手術開始5分前にブトルファノール1mgと1%リドカイン7mlを硬膜外投与し, 酸素21/min, 亜酸化窒素21/min, セボフルラ1~2%で維持した. バイタルに異常は認めなかった. 手術開始10分後に血圧が100/60mmHgから80/40mmHgに低下し, 子宮牽引操作と同時に60あった心拍数は30前後の洞性徐脈になり心停止に移行した. 頸動脈触知および間接血圧測定は不可能であったため, 直ちに手術を中断し, 心臓マッサージ, 純酸素による換気, 輸液負荷, アトロピン投与による蘇生を開始した. 蘇生に対する反応は良好で, 約30秒後に心拍は再開し. 循環動態は速やかに回復した. 瞳孔, 心電図, 血液ガス分析, 電解質に問題はなく, 2時間後に手術は終了した. 麻酔覚醒は良好で, 神経学的後遺症を認めることはなかった. 【まとめ】硬膜外麻酔による交感神経抑制, また子宮牽引による迷走神経興奮から Bezold-Jarisch 反射が誘因となり心停止に至ったと考えられる. 従って, 硬膜外麻酔併用全身麻酔下では, 稀ではあるがBezold-Jarisch 反射を介する心停止が起こる危険性を念頭に置いて麻酔管理する必要がある.
ISSN:0288-4348