神経学的異常を残さず完全回復した1症例 大量出血, 脳低酸素症, BIS

今回我々は, 術中大量出血による異常低血圧と, 高度貧血を呈したにも拘らず, 後遺症を残さず回復した症例を経験したので報告する. 【症例】60歳男性, 身長162cm, 体重51kg. 右肺癌に対し右肺全摘出術施行. 【既往歴】平成7年右肺癌にて右下葉管状切除. 高血圧症にて内服加療中. 【入院時検査所見】胸部X-Pにて右肺門部に異常影を認めた. その他, 異常を認めなかった. 【経過】術中大量出血(25775ml)により異常低血圧が遷延, 高度の貧血(術中Hb0.9mg/dlまで低下)を呈し脳低酸素症が疑われ, ICU入室となった. 入室時JCSIII-300で瞳孔は散大し, 対光反射も消失...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in蘇生 Vol. 21; no. 3; p. 210
Main Authors 野口将, 金子麻衣, 濱野裕子, 小澤拓郎, 渡辺省五, 一色淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 2002
Online AccessGet full text
ISSN0288-4348

Cover

More Information
Summary:今回我々は, 術中大量出血による異常低血圧と, 高度貧血を呈したにも拘らず, 後遺症を残さず回復した症例を経験したので報告する. 【症例】60歳男性, 身長162cm, 体重51kg. 右肺癌に対し右肺全摘出術施行. 【既往歴】平成7年右肺癌にて右下葉管状切除. 高血圧症にて内服加療中. 【入院時検査所見】胸部X-Pにて右肺門部に異常影を認めた. その他, 異常を認めなかった. 【経過】術中大量出血(25775ml)により異常低血圧が遷延, 高度の貧血(術中Hb0.9mg/dlまで低下)を呈し脳低酸素症が疑われ, ICU入室となった. 入室時JCSIII-300で瞳孔は散大し, 対光反射も消失していたがBIS(Bispectra Index)モニターは60~70を示した. このため積極的に輸血製剤, 昇圧剤の投与を行った. 血圧の回復に伴いBIS値が上昇, 体動, 自発呼吸が出現, JCSI-3~II-10へ上昇した. 翌日抜管, 第3病日に神経学的異常を残さず一般病棟へ帰室した. 【考察および結語】本症例は術中に異常低血圧および重症貧血により, 脳低酸素状態に陥ったと推定された. ICU入室時には重篤な脳障害が疑われたが, BISは良好な数値を示した. 当施設では呼吸管理中の頭蓋内病変の早期発見に対するBISの有用性を報告してきたが, 今回のように脳虚血後の予後評価にも有用である可能性が期待された.
ISSN:0288-4348