脳損傷部位における転写調節因子oliglの発現解析 脳損傷, オリゴデンドロサイト前駆細胞, グリオーシス

中枢神経損傷時にはグリオーシスとよばれるグリア系細胞の増殖反応がおこり, 神経再生が妨げられ機能阻害を引き起こす. 最近同定されたbHLH型の転写調節因子である olig1は胎生期に早期のオリゴデンドロサイトに発現し, オリゴデンドロサイトヘの分化を調節している. このolig1が, 脳損傷時に発現するか, さらにはどのグリア細胞に発現しているかを検討した. 【方法】成体マウス凍結脳損傷モデルを作成し, in situ hybridizationを用いて検討した. また, olig1 mRNA陽性細胞を各種細胞マーカー(reactive astrocyte;GFAP, proximal rea...

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Published in蘇生 Vol. 21; no. 3; p. 210
Main Authors 伊関憲, 大槻学, 池上之浩, 川前金幸, 田勢長一郎, 村川雅洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 2002
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Summary:中枢神経損傷時にはグリオーシスとよばれるグリア系細胞の増殖反応がおこり, 神経再生が妨げられ機能阻害を引き起こす. 最近同定されたbHLH型の転写調節因子である olig1は胎生期に早期のオリゴデンドロサイトに発現し, オリゴデンドロサイトヘの分化を調節している. このolig1が, 脳損傷時に発現するか, さらにはどのグリア細胞に発現しているかを検討した. 【方法】成体マウス凍結脳損傷モデルを作成し, in situ hybridizationを用いて検討した. また, olig1 mRNA陽性細胞を各種細胞マーカー(reactive astrocyte;GFAP, proximal reactive astrocyte;TAPA, オリゴデンドロサイト;MAB328, ミクログリア;Ibal)と二重染色して検討した. さらに, オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカーのNG2プロテオグリカン(NG2)やPDGF受容体αとの関係も比較検討した. 【結果】olig1mRNA陽性細胞は脳損傷後7日目をピークに損傷部位周囲に強く発現していた. olig1mRNA陽性細胞はGFAP陽性の細胞集団の一部と重り, さらにTAPAの分布とほぼ一致した. しかし, 脳損傷部位で再ミエリン化をおこしているオリゴデンドロサイトや活性化したミクログリアとは重ならなかった. 一方, NG2やPDGF受容体αの陽性細胞とolig1陽性細胞と重なっていた. 【考察および結語】本研究よりolig1は脳損傷部位に存在するOPCに発現し, グリオーシス部位におけるグリア細胞の分化に機能していることが示唆された.
ISSN:0288-4348