抗癌剤tegafurによると思われる白質脳症の一例
白質脳症をきたしうる抗癌剤としてmethotrexate,carmofurが知られれている. tegafurはcarmofurと同じ系統の5-FU誘導体の一つであるが, tegafur投与による白質脳症の報告は少ない. 今回, 胃癌患者に投与したtegafurによって発症したと思われる白質脳症を経験したので報告する. 〔症例〕59歳男性. 〔主訴〕歩行時のふらつき, 理解力, 記憶力の低下, 失見当識, 構音障害. 〔既往歴〕54歳時直腸癌手術, 57歳時冠動脈バイパス術〔現病歴〕58歳時胃癌手術, その後tegafur(600mg/day)を投与されていた. 術後約1年経過した時点で上記症状...
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Published in | 蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 271 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
1999
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 白質脳症をきたしうる抗癌剤としてmethotrexate,carmofurが知られれている. tegafurはcarmofurと同じ系統の5-FU誘導体の一つであるが, tegafur投与による白質脳症の報告は少ない. 今回, 胃癌患者に投与したtegafurによって発症したと思われる白質脳症を経験したので報告する. 〔症例〕59歳男性. 〔主訴〕歩行時のふらつき, 理解力, 記憶力の低下, 失見当識, 構音障害. 〔既往歴〕54歳時直腸癌手術, 57歳時冠動脈バイパス術〔現病歴〕58歳時胃癌手術, その後tegafur(600mg/day)を投与されていた. 術後約1年経過した時点で上記症状発現し, 近医受診後当院紹介となった. 〔経過〕当院入院後MRSA肺炎を合併し呼吸管理目的にてICU入室となった. ICU入室時, 対光反射あるも呼名反応はなし. 音, 外的刺激に敏感で四肢に硬直を認めた. 検査ではMRIにてT2強調で大脳白質病変を認めた. tegafur投与中止後も症状の改善を認めず, 中止後4ヶ月経過したが現在も意識昏迷状態が続いている. また肺炎は改善しICU退出となったが人工呼吸管理を続けている. 〔考察〕林らの報告によると剖検例においてtegafur投与中止後2年経過してもactiveな脱随が進行している可能性が示唆されており, tegafurは脳内に長時間とどまると考えられる. 鑑別診断としてはCreutzfeldt-Jakob病, 単純ヘルペス脳炎, 脳腫瘍などを考慮する必要がある. 治療法は早期に服薬中止とその後の厳重な全身管理以外に有効な治療法はなく, 初発症状発現の段階で, 本症を疑い服薬中止等の手段を講じることが重要であると思われた. |
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ISSN: | 0288-4348 |