細胞間環境系調節物質の脳細胞障害に対する神経保護作用の検索
1. 目的 本研究は脳内神経保護機構の中で殊に細胞外マトリックスの役割を明らかとするため, 脳機能障害に対する新規コンドロイチン硫酸化合物を用いて脳細胞死に対する薬理効果を神経化学的検索から考究した. 2. 方法 (1)培養脳神経細胞は小脳顆粒細胞を生後8日令ラットから分取し, AraC添加の有無/KCI不含の培養液の相違から, 神経細胞が豊富な群(グリア細胞を殆ど不含), 神経細胞とグリア細胞が混在した群, グリア細胞が豊富な群(神経細胞を殆ど不含)の3群とした. (2)細胞障害の検索は, 生存細胞と的確に反応する細胞内蛍光物質のCalcein AM(最終濃度5μM)を各細胞に加え反応終了後...
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Published in | 蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 189 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
1999
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 1. 目的 本研究は脳内神経保護機構の中で殊に細胞外マトリックスの役割を明らかとするため, 脳機能障害に対する新規コンドロイチン硫酸化合物を用いて脳細胞死に対する薬理効果を神経化学的検索から考究した. 2. 方法 (1)培養脳神経細胞は小脳顆粒細胞を生後8日令ラットから分取し, AraC添加の有無/KCI不含の培養液の相違から, 神経細胞が豊富な群(グリア細胞を殆ど不含), 神経細胞とグリア細胞が混在した群, グリア細胞が豊富な群(神経細胞を殆ど不含)の3群とした. (2)細胞障害の検索は, 生存細胞と的確に反応する細胞内蛍光物質のCalcein AM(最終濃度5μM)を各細胞に加え反応終了後, 蛍光マルチウェルプレートリーダーで励起波長485nm, 蛍光波長530nmで一定以上の蛍光を発する細胞のみ測定し生存率を算出した. (3)LPSの添加は10および20μgとして, 各コンドロイチン硫酸(CS)ならびに合成コンドロイチン硫酸化合物(CS-PE)はLPS添加30分前に行った. 3. 結果 (1)LPSの添加によって誘発される細胞死を3群で比較すると, 神経細胞やグリア細胞単独群で接着不全からの著明な生存率の低下が用量依存的, 且つ, 経時的に認められた. (2)神経細胞とグリア細胞の混在した細胞群ではLPS20μg添加後24時間のincubateで細胞生存率は約60%であった. (3)CS投与群はLPS誘発の細胞障害に対する明らかな保証効果は認められなかったが, CS-PE投与群は0.2~2.5μg/mlの範囲で用量依存的な阻害効果が観察された. 4. 考察および結語 神経-グリア細胞間相互作用が存在する場合, LPS誘発細胞障害の発現は抑制され, しかもCS-PEが低濃度で神経保護効果を示したことから, 細胞外マトリックス調整作用を有する薬物は新しい脳蘇生法とし臨床適用される可能性を有することが示唆された. |
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ISSN: | 0288-4348 |