黄色ブドウ球菌による毒素症候群3例の経験

黄色ブドウ球菌による毒素症候群3例を経験し, 症例血中抗TSST-1抗体測定が本疾患の診断に有効であることを確認した. <症例1>29才, 女性. 1992年2月中旬から全身倦怠感, 軽度の発熱あり. 同月27日より口唇にびらん及び両膝, 両肘に有痛性の発赤疹が出現し, 某院にてSLEの診断下にプレドニン投与を受けたが, 皮疹は両前腕, 両下腿に拡張し, また食欲不振出現し, 3月9日本院へ転院した. 入院時WBC:2800/立方ミリメートル, 抗核抗体は陰性であったが, GOT:1000IU/L, GPT:531IU/L, CPK:321IU/Lと筋組織破壊を示唆する検査所見が得...

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Published in蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 228
Main Authors 清水可方, 朝倉美香, 永井利恵, 小池俊明, 丹野英, 布宮伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 1997
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Summary:黄色ブドウ球菌による毒素症候群3例を経験し, 症例血中抗TSST-1抗体測定が本疾患の診断に有効であることを確認した. <症例1>29才, 女性. 1992年2月中旬から全身倦怠感, 軽度の発熱あり. 同月27日より口唇にびらん及び両膝, 両肘に有痛性の発赤疹が出現し, 某院にてSLEの診断下にプレドニン投与を受けたが, 皮疹は両前腕, 両下腿に拡張し, また食欲不振出現し, 3月9日本院へ転院した. 入院時WBC:2800/立方ミリメートル, 抗核抗体は陰性であったが, GOT:1000IU/L, GPT:531IU/L, CPK:321IU/Lと筋組織破壊を示唆する検査所見が得られた. 肝炎および皮膚筋炎の診断下に高カロリー療法およびステロイド療法施行するも, 3月20日ごろより意識混迷し, 4月10日より呼吸困難から人工呼吸施行となった. 4月12日より低血圧, 乏尿状態に陥り, 同18日より肺水腫が進行して, 同21日死亡した. 剖検にて黄色ブドウ球菌が血液および主要臓器から検出された. 同菌はB型菌外毒素, TSST-1産生, メチシリン感受性, コアグラーゼII型であった. <症例2>22才, 女性. 1993年1月上旬より全身倦怠感, 同下旬より顔面浮腫, 全身の膨隆疹, 食欲不振と脱水状態となり某院へ入院し, 肝炎・腎不全の診断下に輸液およびプレドニン投与を受けたが, 3月上旬より発熱亢進およびショック状態となり, 同8日本院へ転院した. 転院後3日間の血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出された. 同菌はB, C型菌外毒素産生(TSST-1非産生), メチシリン耐性, コアグラーゼII型であった. 以降VC投与により症状は改善し, 4月14日に退院した. 血中からIgG, IgM分画抗TSST-1抗体が検出された. <症例3>33才, 女性. 1994年1月27日第3子を分娩した. 同31日より38℃の発熱とともに顔面浮腫, 結膜びらん, 両前腕に発赤疹が出現した. 解熱鎮痛剤および各種抗生剤投与受けるも, 2月3日に血圧低下, 4日に意識混濁して本院へ転院した. 転院直後の咽頭, 悪露から黄色ブドウ球菌が検出された. 同菌はB, C型菌外毒素, TSST-1産生, メチシリン耐性, コアグラーゼIV型であり, 毒素症候群の診断下に子宮内洗浄, 咽頭の減菌およびVC投与により症状改善を得て, 同21日退院した. 血中からIgG分画抗TSST-1抗体が検出された. <考察および結語>黄色ブドウ球菌による毒素症候群はToddらによる診断基準が提示されているが, 非特異的症状を基礎としているため, 診断確定が困難である. 血中抗TSST-1抗体測定は本症候群の診断に有益である.
ISSN:0288-4348