完全全脳虚血後の脳障害に及ぼす硫酸マグネシウムの効果に関する研究

近年, Mgが生理的Ca channel blockerとして作用する以外に, 興奮性アミノ酸受容体のひとつのNMDA受容体において拮抗作用を有することから, in vitroで虚血性神経細胞障害に対する保護効果が報告されている. そこでわれわれはイヌの全脳虚血モデルを用い, 虚血解除後の神経学的予後に及ぼすMgSO_4 (MG)〈マグネゾール(R):0.813mEq/リットル〉の効果を検討した. <実験方法>雑種成犬36頭を用いた. 虚血作成は, 上行大動脈遮断と大動脈・右房・大腿静脈間バイパス法で行い, 虚血時間は18分間とした. 非投与群(C群)12頭, 虚血後MG投与群(虚...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 49
Main Authors 大川雅廣, 武田吉正, 佐藤正樹, 岡本隆行, 下田豊, 森本直樹, 八塚秀彦, 橋本秀則, 塩飽善友, 小坂二度見
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 1991
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Summary:近年, Mgが生理的Ca channel blockerとして作用する以外に, 興奮性アミノ酸受容体のひとつのNMDA受容体において拮抗作用を有することから, in vitroで虚血性神経細胞障害に対する保護効果が報告されている. そこでわれわれはイヌの全脳虚血モデルを用い, 虚血解除後の神経学的予後に及ぼすMgSO_4 (MG)〈マグネゾール(R):0.813mEq/リットル〉の効果を検討した. <実験方法>雑種成犬36頭を用いた. 虚血作成は, 上行大動脈遮断と大動脈・右房・大腿静脈間バイパス法で行い, 虚血時間は18分間とした. 非投与群(C群)12頭, 虚血後MG投与群(虚血M群)12頭の2群に分け, おのおので急性実験1と慢性実験を行った. また急性実験IIとして残り12頭を虚血負荷せずにMG投与した群(非虚血M群)と虚血M群に分け, おのおので血中およびCSF中のMg濃度を経時的に測定した. 急性実験1で虚血解除後7hまで局所脳血流, 脳圧, および循環系各種パラメータを測定した. 慢性実験では虚血解除後7日までの神経機能をSafarらのスコアにより評価した. なお, MG投与は虚血解除直後~15minまで3.2, 15min~3hまで0.4, 3h~48hまで0.1ml/kg/hの速度で持続的静脈内投与を行った. <結果> 急性実験1:虚血M群は循環系への影響は軽度で, 遅発性脳血流減少(DHP)が有意に改善された. 慢性実験:虚血M群は著明な神経学的予後の改善が認められた. 急性実験II:血中Mg濃度は虚血解除後3hまで4mEq/リットル以上を維持した. CSF Mg濃度は, 虚血M群で虚血前値に比べ虚血解除後20min~7hまで有意な上昇がみられたが, 非虚血M群ではみられなかった. <結語>(1)本虚血後MG投与法は心血管系を有意に抑制することなく, DHPを改善した. (2)虚血後MG投与により, MgのCSFへの移行と著明な神経機能の改善がみられた. (3)今回の神経機能改善は, MgのDHP改善の結果であることも否定できないが, NMDA受容体を含めた非特異的, 広範なCa channel拮抗作用によるものと推察された.
ISSN:0288-4348