北海道内における救急隊CPR施行症例の検討

DOA症例の予後に関する研究は多いが, 都道府県レベルでの調査は少ない. そこで, われわれは北海道救急医学会救急隊員部会と北海道消防学校の協力を得て, 89年中に北海道内で救急隊によりCPRを施行された症例の全数調査を行った. 調査の方法は, 89年中にCPRを行った救急隊に, 1例につき1枚の調査票を記入してもらい, 各消防本部を通じて北海道消防学校が集約, その調査票の提供を受けて, 各事例のパラメータを解析した. 集約された調査例は2, 076例であり, 1, 972例は医療機関に搬入されたが, 104例は搬送されていなかった. 症例を札幌市のA群, 人口13万人以上の中都市郡のB群,...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 38
Main Authors 坂野晶司, 金子正光, 東海林哲郎, 氏家良人, 今泉均, 伊藤靖
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 1991
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Summary:DOA症例の予後に関する研究は多いが, 都道府県レベルでの調査は少ない. そこで, われわれは北海道救急医学会救急隊員部会と北海道消防学校の協力を得て, 89年中に北海道内で救急隊によりCPRを施行された症例の全数調査を行った. 調査の方法は, 89年中にCPRを行った救急隊に, 1例につき1枚の調査票を記入してもらい, 各消防本部を通じて北海道消防学校が集約, その調査票の提供を受けて, 各事例のパラメータを解析した. 集約された調査例は2, 076例であり, 1, 972例は医療機関に搬入されたが, 104例は搬送されていなかった. 症例を札幌市のA群, 人口13万人以上の中都市郡のB群, その他の市町村をC群と分類した. 対人口の搬送数は各群で有意差を認めなかったが, 不搬送例はC群に多かった. 119番覚知から救急隊の現場到着までの時間は3群でほぼ等しいものの, 20分以上を要した例がC群で33例あった. 現場にて患者収容後, 医療機関に搬入されるまでの時間はA群がより長く, 搬送距離もA群が長かった. 札幌市での搬入先は, 搬入数の多い上位5施設に全体の72%の症例が搬入されており, しかもこの5施設のうち3施設までが中央区の半径約2kmの円内にあり, 3次施設の偏在が認められた. CPR施行症例の予後について検討した. CPR施行症例のうち社会復帰したものは37例であり, 全体の1.67%であった. 社会復帰例の総搬送時間は平均24分で全体の28分より短い傾向にあったが有意差は認めなかった. 社会復帰例のうち救急隊のCPRが効なく心拍呼吸再開しなかったものは37例中5例のみであり, DOA症例の予後は社会復帰率0.3%と著しく不良であった. 今後も更に検討を加えて, ドクターカーなどのプレホスピタルケアの実用化に向けてデータを供して行きたい.
ISSN:0288-4348