34. 下顎への移植腸骨に再発したエナメル上皮腫の1例

【症例】72歳の女性. 20歳頃に某病院にて下顎右側大臼歯の抜歯後, 同部に腐骨形成を認め, 下顎骨区域切除術および腸骨再建術を施行された. 以後, 同部に症状の出現はなかったが, 39歳時に右側頬部の黒色感を主訴に近位歯科を受診し, 下顎右側臼歯部の骨透過像を指摘され, 精査加療を目的に本学を初診. 下顎右側小臼歯部のエナメル上皮腫の診断にて下顎骨区域切除術および腸骨再建術を施行後, 約2年間の経過観察を行った. 約30年後の2006年11月28日に下顎右側の違和感を主訴に本学を再診した. 既往歴:34歳時に子宮筋腫摘出術施行, 65歳頃より糖尿病(投薬によりコントロール)の既往あり. 全身...

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Published in歯科放射線 Vol. 47; no. 1/4; p. 146
Main Authors 小山純市, 西山秀昌, 平周三, 勝良剛詞, 斎藤美紀子, 田中礼, 新国農, 林孝文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2007
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Summary:【症例】72歳の女性. 20歳頃に某病院にて下顎右側大臼歯の抜歯後, 同部に腐骨形成を認め, 下顎骨区域切除術および腸骨再建術を施行された. 以後, 同部に症状の出現はなかったが, 39歳時に右側頬部の黒色感を主訴に近位歯科を受診し, 下顎右側臼歯部の骨透過像を指摘され, 精査加療を目的に本学を初診. 下顎右側小臼歯部のエナメル上皮腫の診断にて下顎骨区域切除術および腸骨再建術を施行後, 約2年間の経過観察を行った. 約30年後の2006年11月28日に下顎右側の違和感を主訴に本学を再診した. 既往歴:34歳時に子宮筋腫摘出術施行, 65歳頃より糖尿病(投薬によりコントロール)の既往あり. 全身所見:良好. 口腔外所見:下顎右側に発赤, 腫脹. 圧痛はなく, 顎下リンパ節は蝕知しなかった. 口腔内所見:下顎は無歯顎で右側顎堤は平坦で, 顎堤粘膜に発赤, 腫脹, 圧痛はなかった. 画像所見:単純エックス線では右側の移植腸骨内に境界明瞭な骨透過像が認められた. 再診時のCTでも同部に境界明瞭, 10×9×8mmの大きさのosteolytic lesionが認められ, lesion上縁の皮質骨に断裂を伴っていた. 同時期のMRではlesionはT1WIで筋とisointense, T2WIではリンパ節とisointenseからhyperintenseであり, dynamic studyではlesionは比較的早く造影され, 遅延相でのwash outは強くはなかった. エナメル上皮腫(再発)の臨床診断にて, 局麻下で腫瘍摘出術を施行されたが, 移植骨内のlesionと周囲組織との連続性は明らかではなかった. 摘出物の病理標本で濾胞型ないし叢状型エナメル上皮腫が認められ, 一部では線維組織軟骨化生を伴い, 骨に移行する部分も見られた. 病理組織診断でもエナメル上皮腫の再発であった. 【考察】本症例では再発のメカニズムに関する確証は得られていないが, 移植骨に隣接する軟組織由来の再発と術中のcontaminationによる移植骨への腫瘍細胞播種による再発が仮説として考えられている. それ故, ameloblastomaの腫瘍摘出術時には慎重な手術操作と, 術後管理には長期的なfollow-up検査が欠かせない.
ISSN:0389-9705