2. 上顎犬歯根尖部のCT解剖

【目的】これまで我々は, 上顎前歯・犬歯部の唇側皮質骨に断裂が存在すれば, 超音波検査(US)による皮膚面からの走査で根尖病変が評価可能であること, また犬歯窩部の慢性痛と犬歯根尖部唇側に認められる病的軟組織との間に何らかの関係が示唆されることを報告した. そこで, 犬歯根尖部の炎症像についてさらに詳細に画像診断を行なう上での基礎的検討として, 同部の唇側皮質骨や軟組織の断面解剖について, CTにより評価した. 【方法】顎変形症の評価のために撮影されたシングルヘリカルCT画像から無作為に100症例を抽出し, 以下の検討を行なった. 犬歯に根管治療が行なわれている症例は除外した. (1)上顎犬歯...

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Published in歯科放射線 Vol. 47; no. 1/4; p. 136
Main Authors 林孝文, 五十木裕子, 佐久間久美子, 新国農, 斎藤美紀子, 田中礼, 平周三, 小山純市, 勝良剛詞, 西山秀昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2007
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Summary:【目的】これまで我々は, 上顎前歯・犬歯部の唇側皮質骨に断裂が存在すれば, 超音波検査(US)による皮膚面からの走査で根尖病変が評価可能であること, また犬歯窩部の慢性痛と犬歯根尖部唇側に認められる病的軟組織との間に何らかの関係が示唆されることを報告した. そこで, 犬歯根尖部の炎症像についてさらに詳細に画像診断を行なう上での基礎的検討として, 同部の唇側皮質骨や軟組織の断面解剖について, CTにより評価した. 【方法】顎変形症の評価のために撮影されたシングルヘリカルCT画像から無作為に100症例を抽出し, 以下の検討を行なった. 犬歯に根管治療が行なわれている症例は除外した. (1)上顎犬歯根尖の位置について, 唇側皮質骨との関係から以下の分類を行った. (1)根尖が唇側皮質骨よりも内側に位置しているタイプ(骨内型) (2)根尖が唇側皮質骨の位置に一致しているタイプ(骨面型) (3)根尖が唇側皮質骨よりも外側に位置しているタイプ(骨外型) (2)上顎犬歯根尖部唇側に接する周囲軟組織の所見を評価した. 【結果】(1)対象100症例200側の上顎犬歯根尖の位置は以下の通り. (1)骨内型:86(右側41・左側45) 43% (2)骨面型:105(右側54・左側51) 52.5% (3)骨外型:9(右側5・左側4) 4.5% なお, 解剖学的に犬歯部に多いとされる骨壁の穿孔や欠損は明確に特定はできなかった. (2)唇側に接する軟組織については, すべての症例で上顎犬歯根尖部は表情筋と脂肪組織との境界部に位置していた. 【考察】骨面型・骨外型を合わせると6割弱程度あり, 犬歯根尖部の炎症性変化が唇側皮質骨を覆う骨膜に影響を与える可能性があることが示唆された. また, 犬歯は唇側に脂肪組織が近接しており, CTやUSで病的軟組織の検出が比較的容易と考えられた. 【結論】上顎犬歯根尖部については, 高精細なCTとUSで唇側の解剖構造を詳細に評価する臨床的意義がある.
ISSN:0389-9705