O-33. 上顎非定型顔面痛と根管処置歯との関連に関する検討
【目的】口腔顎顔面の慢性的な疼痛を主訴とする症例は少なくないが, 多くの場合, 疼痛の原因ははっきりしない. 画像検査においても疼痛を十分に説明しうる器質的異常所見が得られることはあまりない. しかし, 日常臨床では, 疼痛の訴えがある部位に比較的良く一致して根管処置歯が認められることが多いという印象を得ている. 特に鼻翼周囲の疼痛を訴える患者では犬歯に根管治療の既往があり, CT像などで歯根尖の頬側に皮質骨を明瞭に指摘できないことが多い. 私たちは, 歯や顎顔面の疼痛と根管処置歯との関連について検討することを目的に, 根管処置歯の頻度, 処置歯周囲の骨および軟組織の状態について, CT画像を...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 47; no. 1/4; p. 100 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
2007
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Summary: | 【目的】口腔顎顔面の慢性的な疼痛を主訴とする症例は少なくないが, 多くの場合, 疼痛の原因ははっきりしない. 画像検査においても疼痛を十分に説明しうる器質的異常所見が得られることはあまりない. しかし, 日常臨床では, 疼痛の訴えがある部位に比較的良く一致して根管処置歯が認められることが多いという印象を得ている. 特に鼻翼周囲の疼痛を訴える患者では犬歯に根管治療の既往があり, CT像などで歯根尖の頬側に皮質骨を明瞭に指摘できないことが多い. 私たちは, 歯や顎顔面の疼痛と根管処置歯との関連について検討することを目的に, 根管処置歯の頻度, 処置歯周囲の骨および軟組織の状態について, CT画像を用いてretrospectiveに検討した. 【方法】2002年から2006年までの5年間に, 非定型顔面痛, 症候性三叉神経痛などの診断にて, 上顎, 頬部の慢性疼痛の原因検索のためCT検査が行なわれた症例を対象とした. 個々の症例について, 根管処置歯の数, 部位, 周囲骨および骨辺縁の軟組織の状態についてCT画像を再検討し, 疼痛を訴える部位との関連について考察した. 【結果】ほとんどの症例で, 疼痛を訴える部位には根管処置歯が認められた. 根尖部では頬側皮質骨が薄く断裂を伴う症例がみられたが, 明らかな根尖病巣や周囲歯槽骨の顕著な硬化を有する症例はほとんどなかった. また, 鼻翼部の疼痛を訴える症例では犬歯の根管処置がなされており, 骨辺縁の軟組織に炎症所見が認められる症例があった. しかし, 非疼痛側や疼痛の自覚のない部位にも根管処置歯が認められ, 疼痛側と同様の所見がみられる症例も多かった. 【考察】歯や顎顔面の疼痛は, 根管処置歯の根尖部での神経切断によるニューロパシックペイン, 周囲の骨や骨膜, 骨周囲の軟組織に対する何らかの持続的な刺激による同部の病的変化の結果生ずるのではないか, という仮説を立てた. 根管処置歯の根尖部には実際に神経切断による病的変化が生じている可能性が考えられる. また, 上顎では根尖への刺激は隣接する組織, たとえば骨膜などに何らかの刺激を容易に及ぼすと推測され, 顔面痛の原因になりうると考えられる. 【結論】上顎の非定型顔面痛を訴える症例では, ほとんどの症例で痛みを訴える部位に一致して根管処置歯が存在したが, 因果関係についてはより高精度の画像診断法の導入も含めてさらなる検討が必要と考えられる. |
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ISSN: | 0389-9705 |