35.超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(FNAC)を行った2例

【目的】本院の画像診断分野にFNACを導入し, 臨床的有効性を確立すること. 今回は, FNACが有効であった2症例を提示する. 【症例】症例1:40歳の男性. 主訴:左の耳のあたりにしこりがあり痛い. 病歴:4日前から左側耳下部に腫瘤を自覚し, 腫瘤が増大してきたので来院した. 現症:左側耳前下部に15×15mmの境界明瞭な腫瘤を触知し, 弾性硬, 可動性と圧痛を認め, 唾液腺の分泌には異常はなかった. 画像所見:初診10日後の超音波像では, 境界明瞭, 辺縁平滑な低エコーの病変で, 約11×12×l6mm, 内部は一部不均一, 後部および後方エコーを認めた. MR像でも, 境界明瞭な病変で...

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Published in歯科放射線 Vol. 46; no. 2; p. 80
Main Authors 小林 馨, 佐藤 徹, 齋藤知之, 三島 章, 五十嵐千浪, 森田康彦, 宇田川孝昭, 土屋光克
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2006
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Summary:【目的】本院の画像診断分野にFNACを導入し, 臨床的有効性を確立すること. 今回は, FNACが有効であった2症例を提示する. 【症例】症例1:40歳の男性. 主訴:左の耳のあたりにしこりがあり痛い. 病歴:4日前から左側耳下部に腫瘤を自覚し, 腫瘤が増大してきたので来院した. 現症:左側耳前下部に15×15mmの境界明瞭な腫瘤を触知し, 弾性硬, 可動性と圧痛を認め, 唾液腺の分泌には異常はなかった. 画像所見:初診10日後の超音波像では, 境界明瞭, 辺縁平滑な低エコーの病変で, 約11×12×l6mm, 内部は一部不均一, 後部および後方エコーを認めた. MR像でも, 境界明瞭な病変であり, T1強調像で高信号, STIR像では低信号, T2強調像では一部高信号であった. 画像診断は脂肪腫の疑いとした. 3週間後のFDG-PETでは集積はなかった. 病変が増大傾向にあるため摘出手術を予定し, 手術の3日前に21Gカテラン針を用い超音波ガイド下FNACを行った. 暗赤色の液状成分を吸引し, 病変は縮小した. 細胞診はClass IIIであった. 摘出後の病理組織診断は, 退行変性のある唾液腺導管嚢胞の疑いであった. 症例2:60歳の女性. 主訴:左のあごがはれた. 病歴:3週間前に左側顎下蔀に腫脹と硬結が出現し, 内科で抗菌薬の処方を受け, 腫脹は減少したが, 硬結が残存したため来院した. 現症:左側顎下部に弾性硬の腫瘤を触知し, 軽度の圧痛があり, 唾液腺の分泌には異常はなかった. 画像所見:初診から3週間後のMR像では, 左側顎下腺外側部に約2×1×2cmの腫瘤を認め, T1, T2強調像では顎下腺と等信号で連続していた. STIR像では高信号で顎下腺と連続していた. 画像診断は, 良性腫瘍の疑いとした. この2週後に造影CTを行い, rim enhancementを疑う造影像を示し, 顎下腺とは分離して観察できた. この時点で画像診断は, 悪性腫瘍のリンパ節転移の疑いに変更した. 5日後のFDG-PETでは病変に強い集積を認めた. その4日後に, 超音波ガイド下FNACを行い, 細胞診では悪性所見はなかった. 最終診断は結核性リンパ節炎であった. 【考察ならびにまとめ】顎口腔領域でのFNACはすでに報告はされており, 演者らはこれを導入したにすぎない. 今回は, 画像診断に苦慮する症例に対して, FNACは画像診断を補完する有力な技術であることを再確認した.
ISSN:0389-9705