81. 悪性・非悪性の口腔粘膜細胞株におけるレチノイド酸とPTHrP添加の影響

【目的】副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は, 前立腺や消化管の腺癌などで細胞の分化や増殖との関連が報告され, 口腔扁平上皮癌でも組織学的悪性度との関連が認められている. また, レチノイド酸(RA)は正常上皮組織の分化に影響を及ぼすことが報告されており, ヒト口腔癌由来の細胞株における影響も報告されている. 私達は悪性と非悪性の口腔細胞株において, PTHrPフラグメント(1-34, 34-53, 107-139)とRAを添加し, それらが細胞に及ぼす影響を検討した. 【方法】細胞株は, 舌由来扁平上皮癌細胞(SCC-25)とヒト歯肉由来不死化ケラチノサイト細胞株(NDUSD-1)を用い...

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Published in歯科放射線 Vol. 45; no. 4; p. 190
Main Authors 諏江美樹子, 土持 眞, 川瀬知之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2005
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Summary:【目的】副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は, 前立腺や消化管の腺癌などで細胞の分化や増殖との関連が報告され, 口腔扁平上皮癌でも組織学的悪性度との関連が認められている. また, レチノイド酸(RA)は正常上皮組織の分化に影響を及ぼすことが報告されており, ヒト口腔癌由来の細胞株における影響も報告されている. 私達は悪性と非悪性の口腔細胞株において, PTHrPフラグメント(1-34, 34-53, 107-139)とRAを添加し, それらが細胞に及ぼす影響を検討した. 【方法】細胞株は, 舌由来扁平上皮癌細胞(SCC-25)とヒト歯肉由来不死化ケラチノサイト細胞株(NDUSD-1)を用いた. 各細胞に, RAまたはPTHrPフラグメント(1-34, 34-53, 107-139)を添加し, 増殖, 形態学的変化を観察した. また, 分化への影響をみるため免疫組織化学的に, インボルクリン, サイトケラチン(CK) (CK5.6.18, CK10, CK14)の局在を検討した. 【結果】RA添加により, SCC-25細胞は用量依存的に増殖の抑制が観察され, 細胞は細胞質腫大や核の消失を伴う様々な形態を示した. NDUSD-1細胞ではRAを10μM添加することにより明らかな増殖の抑制が見られたが, 低濃度の添加では明らかな変化を認めなかった. 細胞は, 棘状突起を示す細胞質や線維化が認められた. またPTHrPの添加により, 細胞数や形態的変化は見られなかった. 免疫組織学的検討では, RAの添加により両方の細胞系でインボルクリンでの染色が強く観察された. 各サイトケラチン染色においては染色に変化は見られなかった. PTHrPの各フラグメント添加においては, いずれの染色においても変化は見られなかった. 【まとめ】今回私達は, RAとPTHrPを悪性細胞株と非悪性細胞株に添加し, 増殖と分化への影響を調べた. RAはいずれの細胞株においても増殖を抑制し, インボルクリンの発現増加を認めた. PTHrPは増殖, 形態, インボルクリン, サイトケラチン(CK)の局在に影響を及ぼさなかった. 本研究で用いた細胞株においてはPTHrPのレセプターについての詳細な検討が今後必要と思われる. (本研究の一部は第20回日本口腔腫瘍学会総会, 80th General Session of the IADR, 日本口腔科学会雑誌にて発表した. )
ISSN:0389-9705