16. 口腔扁平上皮癌患者における舌骨の外側部のリンパ節転移について

【目的】口腔癌患者において顎下リンパ節よりも下方深側で, 舌骨の外側, 顎二腹筋や舌骨舌筋よりも下方, 頸動脈よりも前方の領域にリンパ節転移が稀にみられる. この領域のリンパ節腫脹の頻度, 転移の様相を明らかにし, 臨床的な意義を考察する. 【対象】口腔扁平上皮癌患者91例(舌癌34例, 口底癌6例, 下顎歯肉癌20例, 上顎歯肉癌13例, 頬粘膜癌16例, 硬口蓋癌2例). 【方法】初診時および経過観察中のCT像において, 舌骨外側部のリンパ節の描出の有無および所見を評価した. 同時にその他の頸部リンパ節や舌リンパ節も観察した. 転移リンパ節の判定基準は頸部郭清またはリンパ節生検後に病理組織...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科放射線 Vol. 45; no. 4; p. 165
Main Authors 有地淑子, 大林修文, 後藤真一, 泉 雅浩, 内藤宗孝, 加藤麦夫, 落合栄樹, 宮地 斉, 下郷和雄, 有地榮一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2005
Online AccessGet full text
ISSN0389-9705

Cover

More Information
Summary:【目的】口腔癌患者において顎下リンパ節よりも下方深側で, 舌骨の外側, 顎二腹筋や舌骨舌筋よりも下方, 頸動脈よりも前方の領域にリンパ節転移が稀にみられる. この領域のリンパ節腫脹の頻度, 転移の様相を明らかにし, 臨床的な意義を考察する. 【対象】口腔扁平上皮癌患者91例(舌癌34例, 口底癌6例, 下顎歯肉癌20例, 上顎歯肉癌13例, 頬粘膜癌16例, 硬口蓋癌2例). 【方法】初診時および経過観察中のCT像において, 舌骨外側部のリンパ節の描出の有無および所見を評価した. 同時にその他の頸部リンパ節や舌リンパ節も観察した. 転移リンパ節の判定基準は頸部郭清またはリンパ節生検後に病理組織学的に転移が確認されたものとし, 非転移リンパ節は組織学的に転移のないものあるいはCT像を含む経過観察にて1年以上後発転移を認めないものとした. 【結果】1)舌骨の外側部にリンパ節がみられたのは, 初診時において舌癌1例, 経過観察中において舌癌2例であり, 他の部位に原発したものでは見られなかった. CT所見は, それぞれ12×11mm大で不均一な造影, 20×15mm大で比較的均一な造影, 15×13mm大で中心壊死(rim enhancement)を呈し, いずれも画像上転移が疑われ, 病理組織学的にも転移が確認された. 2)舌骨外側部に転移リンパ節のあった3例のうち, 1例では患側の他の頸部リンパ節および対側の頸部リンパ節に転移がみられた. 1例では対側の頸部リンパ節転移に対する郭清後に患側のこの部位にのみ転移が見られた. 残り1例では患側のこの部位にのみ転移が見られた. 3)舌骨外側部に転移リンパ節のあった3例のうち, 1例は非転移舌リンパ節がみられ, 残り2例は舌リンパ節がみられなかった. 【考察】今回着目した舌骨の外側部の領域は, Somらの分類(AJR, 2000)によるとIBの領域になると思われる. 頭頸部癌取扱い規約によると顎下にも内深頸領域にも分類しがたい領域である. この領域の解剖学的位置やリンパの流れ, あるいは転移が舌癌患者にのみに見られたことを考えると, この部のリンパ節転移は外側舌リンパ節から連続するリンパ流によってもたらされたものと考えられた. したがって舌癌患者においては, CT像でこの領域に留意すべきである. 今回の検索では舌リンパ節との関連は明らかにできなかったが, さらなる検索が必要と考えられる.
ISSN:0389-9705