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5.上顎臼歯部に発生した原始性嚢胞の一例
嚢胞性疾患の中で原始性嚢胞の頻度は少なく, 今回病理組織学的に原始性嚢胞と診断された症例について報告する. 【症例】患者:54歳, 男性 初診:2004年5月21日 主訴:左側頬部の腫脹 既往歴:高脂血症, 糖尿病 現病歴:2004年4月末頃, 左側頬部の腫脹を自覚したが放置していた. 糖尿病をフォロー中の内科医から大阪大学歯学部附属病院を紹介され来院した. 現症:左側眼窩下部から頬骨部にかけて直径40mm程度のびまん性の腫脹を認めた. 軽度の圧痛を認めるが, 自発痛はなかった. 口腔内診査の結果, 左側上顎臼歯部の歯肉頬粘膜移行部に弾性軟の腫脹を認めたが, 表面粘膜は正常であった. 左側上顎...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 45; no. 1; pp. 25 - 26 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
2005
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-9705 |
Cover
Summary: | 嚢胞性疾患の中で原始性嚢胞の頻度は少なく, 今回病理組織学的に原始性嚢胞と診断された症例について報告する. 【症例】患者:54歳, 男性 初診:2004年5月21日 主訴:左側頬部の腫脹 既往歴:高脂血症, 糖尿病 現病歴:2004年4月末頃, 左側頬部の腫脹を自覚したが放置していた. 糖尿病をフォロー中の内科医から大阪大学歯学部附属病院を紹介され来院した. 現症:左側眼窩下部から頬骨部にかけて直径40mm程度のびまん性の腫脹を認めた. 軽度の圧痛を認めるが, 自発痛はなかった. 口腔内診査の結果, 左側上顎臼歯部の歯肉頬粘膜移行部に弾性軟の腫脹を認めたが, 表面粘膜は正常であった. 左側上顎臼歯の全歯には動揺および打診痛は認められなかった. 画像所見:パノラマX線写真にて, 左側上顎大臼歯部に境界明瞭で周囲を一層の不透過像で囲まれたX線透過性病変を認めた. 同病変の内部には左側上第一大臼歯の頬側2根の根尖部が含まれていた. CT画像では, 左側上顎大臼歯部に30mm×25mm×25mm大の境界明瞭な病変を認め, 病変によって上顎洞の壁を著明に変形させていた. また, 病変による変形した骨の立ち上がりはほぼ直角であった. 左側上第一大臼歯の頬側2根の根尖は同病変の中心から離れていた. これらの所見より腫瘍性の疾患を疑ったが, 嚢胞性病変と鑑別するためには造影検査を行う必要があった, 後日造影検査を行ったところ, 病変の辺縁にのみ高い造影性を認め, 内部は造影されなかった. これによって, 同病変を嚢胞性疾患と考えた. また, 歯との関係より, 歯根嚢胞および含歯性嚢胞の可能性を否定した. 【画像診断】原始性嚢胞または歯原性角化嚢胞【病理診断】原始性嚢胞【まとめ】原始性嚢胞は, しばしば歯原性角化嚢胞と同義語として扱われるが, 原始性嚢胞の裏層上皮がすべて角化しているわけではないと言われている. 当院での病理組織診断では, 非角化重層扁平上皮によって裏層された埋伏歯を伴わない発育性歯原性嚢胞を原始性嚢胞としている. 本症例は, この病理組織像を示し, 原始性嚢胞と診断した. |
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ISSN: | 0389-9705 |