13.オトガイ部知覚麻痺を初発症状とした前立腺癌の下顎骨転移の一例

【目的】オトガイ部の知覚麻痺を初発症状とした前立腺癌下顎骨転移の一症例を報告する. 【症例】69歳男性. 主訴は左側オトガイ部の知覚鈍麻及び接触痛であった. 口腔内所見では明らかな異常は認めなかった. 感覚検査では, 左側オトガイ神経支配領域に一致した部位に閾値上昇を認めた, 既往歴に平成元年直腸癌, 平成12年前立腺癌があった. パノラマX線写真では, 左側下顎大臼歯部に瀰漫性な骨硬化像を認める他, 明らかな神経損傷を来す所見は認めなかった. 同部を精査する為, X線CT検査を施行したところ, 下顎孔付近を中心に骨形成を伴う腫瘤性病変と相当部皮質骨に骨膜反応を認めた. 更に, 病変により皮質...

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Published in歯科放射線 Vol. 44; no. 4; p. 293
Main Authors 田中達朗, 森本泰宏, 岡部幸子, 鬼頭慎司, 篠原雄二, 坂本英治, 大庭健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2004
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Summary:【目的】オトガイ部の知覚麻痺を初発症状とした前立腺癌下顎骨転移の一症例を報告する. 【症例】69歳男性. 主訴は左側オトガイ部の知覚鈍麻及び接触痛であった. 口腔内所見では明らかな異常は認めなかった. 感覚検査では, 左側オトガイ神経支配領域に一致した部位に閾値上昇を認めた, 既往歴に平成元年直腸癌, 平成12年前立腺癌があった. パノラマX線写真では, 左側下顎大臼歯部に瀰漫性な骨硬化像を認める他, 明らかな神経損傷を来す所見は認めなかった. 同部を精査する為, X線CT検査を施行したところ, 下顎孔付近を中心に骨形成を伴う腫瘤性病変と相当部皮質骨に骨膜反応を認めた. 更に, 病変により皮質骨の不連続な破壊像を認めた. 我々は, 画像診断として前立腺癌の下顎骨転移と判断した. 他部位への転移も疑い施行された骨シンチグラフィ(99mTc-HMDP)により左側下顎骨以外にも肋骨, 脊椎骨への集積を認めた. 腫瘤性病変の組織生検から前立腺癌の転移であることが確定された. これにより当初の主訴であった左オトガイ部の神経症状は前立腺癌の転移によるnumb chin syndromeであると診断された. 【考察】口腔領域における原因不明の感覚麻痺などを主訴とした場合には, 顎骨への転移性腫瘍も想定し多角的な検査が必要であると考える.
ISSN:0389-9705