7.右側下顎骨内の透過性病変からみつかったMultiple myelomaの症例
Multiple myelomaは形質細胞の腫瘍性増殖性疾患といわれ, 1973年にRustizkyによってmultiples myelomaの病名ではじめて報告された. 現在では免疫グロブリン遺伝子分化機構が明らかにされ急速に診断, 治療に拍車がかかって来ている. X線学的にはmyelomaは骨の融解像が主な所見であるため, 悪性所見を呈する悪性リンパ腫, 転移性病変, 白血病, 急性感染症などの疾患との鑑別が必要とされる. 本症例は最初に某総合病院から悪性リンパ腫の疑いがあると診断され治療依頼で来院した患者であり, その後の画像診断や医学部血液内科との連携および病理組織診断からmultip...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 44; no. 1; pp. 73 - 74 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
2004
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ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | Multiple myelomaは形質細胞の腫瘍性増殖性疾患といわれ, 1973年にRustizkyによってmultiples myelomaの病名ではじめて報告された. 現在では免疫グロブリン遺伝子分化機構が明らかにされ急速に診断, 治療に拍車がかかって来ている. X線学的にはmyelomaは骨の融解像が主な所見であるため, 悪性所見を呈する悪性リンパ腫, 転移性病変, 白血病, 急性感染症などの疾患との鑑別が必要とされる. 本症例は最初に某総合病院から悪性リンパ腫の疑いがあると診断され治療依頼で来院した患者であり, その後の画像診断や医学部血液内科との連携および病理組織診断からmultiple myelomaと診断に至った症例を経験したので報告した. 患者は69歳の女性で, 現病歴としては来院1ヶ月前から右側下顎臼歯部にうずくような感じがあり某歯科に来院し, X線検査後同部位に透過像を指摘され某総合病院歯科を紹介された. そこで2週間前に歯を3本抜歯を受け同時に生検を受けている. 既往歴としては, 20年前に胆石の手術, 急性腎不全にて透析を受け現在は完治しているとのことである. 顔貌所見としては, 右側頬部の軽度の腫脹がある. 口腔内所見では, 右側下顎67番部に抜歯窩がみられ圧痛があり, 表面は潰瘍様でありその周囲は硬結していた. 初診時のパノラマ像では右側下顎567番相当部を中心に境界不明瞭な透過像が広範囲に存在し, 辺縁は浸潤性に骨を吸収し骨梁構造が淡く消失し辺縁は移行像を示した. 下顎管は消失し下縁皮質骨も菲薄化し吸収像を呈した. P-A像から骨膨隆はなく右側下顎角部の透過性の亢進を示した. また頭頂部に大小の円形の透過像が数個存在した. CTでは頬舌側に皮質骨を破壊し骨外に突出したmassがみられ, 造影でmassは不均一に増強され, MR検査ではSTIR法で膨脹性の腫瘤で境界明瞭であり, T1強調画像で周囲の脂肪髄と比べて低信号, 脂肪抑制T2強調画像で高信号を呈してみられた. Gd強調画像にて全体的に淡く増強されていた. 全身のGa67シンチグラフィーでは右上腕骨と大腿骨に集積像がみられた. 画像診断学的には右側下顎骨部の骨中心性の悪性腫瘍が疑われ, シンチグラフィーや頭頂部に大小の円形の透過像を考えるとmultiple myelomaも否定できなく疑われた. 最終的には, probeからの病理組織診断およびFACS解析の結果からplasmacytomaの確定診断されたため日大医学部駿河台病院血液内科にて化学療法のため入院治療を行った. 現在は予後良好で経過観察をしている. |
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ISSN: | 0389-9705 |