P-1 口腔顎顔面領域の放射線誘発肉腫の3例
放射線治療は頭頚部悪性腫瘍に対する治療法として優れた治療法であるが, その晩発有害事象としての放射線誘発肉腫の存在は以前より諸家により報告されてきた. Cahanらは放射線誘発骨肉腫の基準として以下の4つの定義を提唱している. 1) 照射前の骨に悪性の所見を有さないこと. 2) 放射線治療を施行されており肉腫は照射野内から発生していること. 3) 肉腫が発生するまでに十分な潜伏期間が存在すること. 4) 組織学的に肉腫であること. この基準に合致し, 顎顔面領域の放射線誘発肉腫と考えられる3例について, その臨床経過および画像所見を報告する. 症例1:右側下顎骨骨肉腫. 病歴:1981年1月に...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 43; no. suppl; p. 69 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
2003
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ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | 放射線治療は頭頚部悪性腫瘍に対する治療法として優れた治療法であるが, その晩発有害事象としての放射線誘発肉腫の存在は以前より諸家により報告されてきた. Cahanらは放射線誘発骨肉腫の基準として以下の4つの定義を提唱している. 1) 照射前の骨に悪性の所見を有さないこと. 2) 放射線治療を施行されており肉腫は照射野内から発生していること. 3) 肉腫が発生するまでに十分な潜伏期間が存在すること. 4) 組織学的に肉腫であること. この基準に合致し, 顎顔面領域の放射線誘発肉腫と考えられる3例について, その臨床経過および画像所見を報告する. 症例1:右側下顎骨骨肉腫. 病歴:1981年1月に右側口蓋扁桃悪性リンパ腫の診断にて60Coにて放射線治療施行される. 照射線量は不明. 2001年6月より右側下顎臼歯部の腫脹を自覚. 画像所見:CTでは右側下顎角部に皮質骨の破壊を伴う境界不明瞭なmassとして描出され, MRIではT1WIで筋肉と同程度, T2WIで不均一な高信号を示した. 症例2:左側下顎骨悪性線維性組織芽球腫. 病歴:1980年2月左側上咽頭扁平上皮癌の診断にて60Coにて60Gy照射. 1990年12月左側顎関節部に疼痛を自覚. 画像所見:CTでは左側関節突起の皮質骨の破壊を伴う境界不明瞭なmassとして描出され, MRIではT1WIで高信号, T2WIでは不均一な高信号を示した. 症例3:右側下顎骨骨肉腫. 病歴:1975年1月右側口腔底扁平上皮癌の診断にて60Coにて60Gy照射. 1982年9月局所再発にて137Csにて70Gy組織内照射. 1997年4月左側下顎部の腫脹を自覚. 画像所見:CTでは左側下顎骨体部を中心とした両側皮質骨の破壊を伴うmassを認め, 内部には隔壁様の石灰化を認めた. MRIでは内部に液体の貯溜を示唆するareaの散在を認めた. まとめ:最初の照射から肉腫発生までの期間は9年10ヶ月から22年3ヶ月であった. 放射線照射線量は症例1に関しては不明であるが一次病変が悪性リンパ腫であることを考慮すると40Gy程度であろうと推測される. また, 症例3は再照射されており, 過線量であると考えられる. 画像的には3例とも悪性骨腫瘍を示唆するものであったが, 共通した所見は認められなかった. |
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ISSN: | 0389-9705 |