全身疾患の部分症としての顎骨骨髄炎

全身の骨に原因不明の骨髄炎の生じる疾患がある. Synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis, osteitis syndrome(Sapho症候群)である. 下顎骨に発症する事も稀ではなく好発部位の1つとさえ言われている. しかしながら歯科領域での報告例はほとんどない. 理由として考えられることは, 他の顎骨骨髄炎と混同されているということである. すなわち, 下顎骨に好発する細菌感染性の骨髄炎と同類の病変として取り扱われている可能性が高い. そこで, 他の下顎骨骨髄炎との類似点や鑑別点を明らかとすることを目的に, Sapho症候群下顎骨骨髄炎の臨床像を...

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Published in歯科放射線 Vol. 41; no. 2; pp. 128 - 129
Main Author 末井良和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2001
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ISSN0389-9705

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Summary:全身の骨に原因不明の骨髄炎の生じる疾患がある. Synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis, osteitis syndrome(Sapho症候群)である. 下顎骨に発症する事も稀ではなく好発部位の1つとさえ言われている. しかしながら歯科領域での報告例はほとんどない. 理由として考えられることは, 他の顎骨骨髄炎と混同されているということである. すなわち, 下顎骨に好発する細菌感染性の骨髄炎と同類の病変として取り扱われている可能性が高い. そこで, 他の下顎骨骨髄炎との類似点や鑑別点を明らかとすることを目的に, Sapho症候群下顎骨骨髄炎の臨床像を調査し下顎骨化膿性骨髄炎との比較を行った. 対象は下顎骨骨髄炎を主訴として来院したSapho症候群10症例と下顎骨化膿性骨髄炎32症例, 検討項目は年齢, 性別, 腫脹や疼痛の有無, エックス線像, 治療経過である. エックス線像の検討には, 初診時および経過観察時に撮影された全ての単純エックス線写真とCT画像を用い, 骨吸収像や硬化像の程度, 範囲, および関係, 骨膜反応像, 顎骨の外形の変化について詳細に検討した. なお, 骨膜反応像は層状, 塊状, 両者の混在する像の3つに分類した. 結果, 性別, 年齢, 腫脹, 疼痛などの違いにより両疾患を鑑別することは出来なかったが, Sapho症候群では排膿が認められなかった. 病変の経過と予後について, Sapho症候群は抗菌療法を行ったにも拘らず症状経過は平均28か月, しかも最終経過観察時に8例では症状が継続していた. 治療後の症状の再発回数も化膿性骨髄炎の0.1回に対し4.2回と明らかに難治性であった. また, Sapho症候群に特徴的であると考えられたエックス線像として, 1.広範囲に生じる皮質骨吸収・海綿骨領域の骨硬化・骨膜反応と内部に点在する骨融解像(Mixed patternのX線像), 2.塊状の骨膜反応像, 3.顎骨の外部吸収像, 4.顎骨の肥大, などが示された. そして, これらエックス線像は下顎骨骨髄炎の中で非化膿性, 難治性で原因のはっきりとしないという報告の多いび漫性硬化性性骨髄炎, 慢性硬化性骨髄炎, 原発性慢性骨髄炎, 乾性骨髄炎でも報告があり, 両者の関連性が強く疑われた. 口演では, 歯科領域では馴染みの薄い疾患であるSapho症候群について概説し, エックス線像を中心に一般の顎骨骨髄炎との類似点や鑑別点について検討を行っていく.
ISSN:0389-9705