今日の血液疾患の治療法

広島は原爆放射線による血液障害と深い関係を有してきた. 後障害としての白血病は, 早くから認められ, 被曝後7~10年でピークとなった. その後, リスクは低下しているが, 現在でも過剰リスクが認められている. 最近, 前白血病状態の一つである骨髄異形成症候群(MDS)にも放射線被曝との関係が明らかとなった. 本講演では, 成人の白血病, 悪性リンパ腫を中心に治療法の現況を紹介する. 急性白血病は近年の薬物療法や造血幹細胞移植療法の進歩により治癒可能な疾患となった. 薬物療法としては多剤併用化学療法が基本となっている. 治癒を得るためには出来る限り強力な治療により完全寛解に導入することが必要で...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科放射線 Vol. 41; no. 2; pp. 126 - 127
Main Author 木村昭郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2001
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:広島は原爆放射線による血液障害と深い関係を有してきた. 後障害としての白血病は, 早くから認められ, 被曝後7~10年でピークとなった. その後, リスクは低下しているが, 現在でも過剰リスクが認められている. 最近, 前白血病状態の一つである骨髄異形成症候群(MDS)にも放射線被曝との関係が明らかとなった. 本講演では, 成人の白血病, 悪性リンパ腫を中心に治療法の現況を紹介する. 急性白血病は近年の薬物療法や造血幹細胞移植療法の進歩により治癒可能な疾患となった. 薬物療法としては多剤併用化学療法が基本となっている. 治癒を得るためには出来る限り強力な治療により完全寛解に導入することが必要であり, 強力な治療を完遂するためには, 感染対策や出血対策などの支持療法が非常に重要である. 薬物療法の中で画期的なものはレチノイン酸による分化誘導療法で, 急性前骨髄球白血病の寛解導入療法として現在では標準的なものとなっている. 完全寛解になっても10^9 レベル程度の白血病細胞が存在しているので後療法が絶対必要である. 造血幹細胞移植療法は最も強力な寛解後療法である. 造血幹細胞移植としては自家および同種のそれぞれ骨髄移植と末梢血幹細胞移植の選択肢があり, 最近では前処置を緩めたミニ移植も行われる. 慢性骨髄性白血病では特徴的な染色体異常であるPh^1 染色体陽性細胞が増殖しているが, 慢性期のインターフェロンα治療では, 約20~30%程度の症例に細胞遺伝学的完全寛解すなわちPh^1 染色体の完全消失がみられる. 条件が整えば同種造血幹細胞移植も有効である. 悪性リンパ腫は非常に多様な疾患群であるが, 治療は化学療法と放射線療法が中心である. 日本に多い非ホジキンリンパ腫の中で, 限局型では放射線照射により治癒が期待されるが, 中悪性度, 高悪性度のものでは, 多剤併用化学療法が基本である. 自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法も実施されている. 最近B細胞リンパ腫に対しては, マウス・ヒトキメラ型CD20抗体を用いたモノクロナール抗体療法も選択肢の一つとなった.
ISSN:0389-9705