口内法X線画像における経時的変化検出のための差分処理

経時的差分法は, 撮影時期の異なる2枚のX線画像から, 新しく出現した異常陰影や治癒変化を強調して描出できるのできわめて有益である. しかし, 従来の手法では位置ずれによるアーチファクトを防ぐため, 規格化ジグを患者ごとに作成して, 毎度それを使用し撮影を行ったり, マーカーを位置検出の基準に用いて位置補正を行うなど, 臨床的応用には煩雑さが伴った. そこで我々は, 規格化ジグやマーカーを用いず, 画像そのもの持つ位相を, 位置ずれ量計測の情報源とした新しい手法を開発し, 口内法骨X線像の経時的差分画像抽出に応用した. 位相限定相関はフーリエ変換を用いた相関の計算過程において, 入力画像の振幅...

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Published in歯科放射線 Vol. 40; no. suppl; p. 101
Main Authors 川股亮太, 小菅栄子, 大黒俊樹, 閑野政則, 鹿島勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2000
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ISSN0389-9705

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Summary:経時的差分法は, 撮影時期の異なる2枚のX線画像から, 新しく出現した異常陰影や治癒変化を強調して描出できるのできわめて有益である. しかし, 従来の手法では位置ずれによるアーチファクトを防ぐため, 規格化ジグを患者ごとに作成して, 毎度それを使用し撮影を行ったり, マーカーを位置検出の基準に用いて位置補正を行うなど, 臨床的応用には煩雑さが伴った. そこで我々は, 規格化ジグやマーカーを用いず, 画像そのもの持つ位相を, 位置ずれ量計測の情報源とした新しい手法を開発し, 口内法骨X線像の経時的差分画像抽出に応用した. 位相限定相関はフーリエ変換を用いた相関の計算過程において, 入力画像の振幅成分を固定値で置き換えるように修正した新しい位置補正アルゴリズムである. 位相限定の自己相関はデルタ関数となり, 相関に比べきわめて急峻な識別特性を持つ. また, 像のずれ量は相関のピークが出現する位置のずれ量に変換されるため, 画像の振幅の影響を受けにくいという特性を持つ. 今回は輝尽性蛍光体(IP)ベースのデジタル画像システムと, ヒト下顎骨ファントームを用い, 条件の異なる2枚1組の複数組のX線画像に対し, 本法により位置補正と差分処理を自動的に一連で行い, 適応可能な位置ずれ量の条件範囲を調べた. 結果:IPに対し平行な平面における移動では, 最大有効画像領域31mm×41mmの中で15mmのずれが許容された. また, 回転については±30°まで正確に回転補正を行なえた. さらに, 被写体に対するIPの傾斜度の変化については±9°まで許容された. IP表面の傷や測長用グリッドの像は位置補正には影響を及ぼさなかったが, コントラストの強い傷は当然差分像に明瞭に描出された. 以上のことから本法は, 臨床的に回避しがたい撮影時の位置ずれに対し, 大変有効な自動位置補正能を発揮し, 臨床的な範囲の位置ずれやIP表面の傷などの影響も受けない, 有望かつ実用的な経時差分画像法と考えられる.
ISSN:0389-9705