臨床データの研究利用やインフォームドコンセントなど

近年, 患者の権利ならびにプライバシーの保護ということが問題にされるようになり, インフォームドコンセントという言葉が頻繁に使用されるようになった. 診療に置いて放射線という非常に役に立つが悪影響もあることがはっきりしている手段を用いる我々歯科放射線医にとってはより切実な問題といえる. この「倫理的問題」は診療はともかくそのデータを研究使用する際にはどのように考えるべきであろうか. 新しい治療法の効果は無作為割付試験しなくて正当な評価が得られないのは誰もが知っている事実である. しかし無作為割付試験の前提としてはインフォームドコンセントが必須であり, インフォームドコンセントをやればやるほど臨...

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Published in歯科放射線 Vol. 39; no. 1; p. 71
Main Author 有地榮一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 1999
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Summary:近年, 患者の権利ならびにプライバシーの保護ということが問題にされるようになり, インフォームドコンセントという言葉が頻繁に使用されるようになった. 診療に置いて放射線という非常に役に立つが悪影響もあることがはっきりしている手段を用いる我々歯科放射線医にとってはより切実な問題といえる. この「倫理的問題」は診療はともかくそのデータを研究使用する際にはどのように考えるべきであろうか. 新しい治療法の効果は無作為割付試験しなくて正当な評価が得られないのは誰もが知っている事実である. しかし無作為割付試験の前提としてはインフォームドコンセントが必須であり, インフォームドコンセントをやればやるほど臨床試験への参加者が得られにくいというのも事実である. したがって無作為割付試験とインフォームドコンセントは両立しないとする意見もある. この矛盾をどう解決するのか. あるいは我々が今日まで行ってきた各種の疾患のX線写真所見を分析するという研究においても, インフォームドコンセントは必要なのだろうか. このようなヒトを対象とする生物医学的研究に対する考え方の基本を示したものとして「ヘルシンキ宣言」がある. 今回はこの宣言にしたがってこれらの問題の考え方を示してみた. 研究者として今後この「倫理的問題」といわれる問題は避けて通ることのできないものであり, 我々一人ひとりがしっかりとした考え方を身につける必要に迫られていることを強調したい.
ISSN:0389-9705