中咽頭癌術後患者の嚥下動態の1観察例

目的:X線ビデオ透視検査(以下VF)を使って中咽頭癌術後の嚥下動態の観察 方法:対象は中咽頭扁平上皮癌の診断の下, 中咽頭切除, 下顎辺縁切除, および腹直筋皮弁による即時再建術を受けた患者(男性, 65歳)である. この患者に術後34, 41, 48日目に造影剤(硫酸バリウム)を嚥下させた状態を30フレーム/秒でVFに撮影し, 得られた画像を画像解析システムによって解析した. その結果を時間軸上の定量的評価(喉頭挙上開始時間, 輪状咽頭筋領域到達時間, 輪状咽頭筋反応時間)と誤嚥の重症度(気管内侵入, 喉頭内侵入, 異常なし), 1回の嚥下動作後の咽頭部(喉頭蓋谷, 梨状陥凹, 喉頭前庭)へ...

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Published in歯科放射線 Vol. 38; no. suppl; p. 106
Main Authors 小澤素子, 道脇幸博, 横山美加, 高橋浩二, 平野薫, 道健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 1998
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ISSN0389-9705

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Summary:目的:X線ビデオ透視検査(以下VF)を使って中咽頭癌術後の嚥下動態の観察 方法:対象は中咽頭扁平上皮癌の診断の下, 中咽頭切除, 下顎辺縁切除, および腹直筋皮弁による即時再建術を受けた患者(男性, 65歳)である. この患者に術後34, 41, 48日目に造影剤(硫酸バリウム)を嚥下させた状態を30フレーム/秒でVFに撮影し, 得られた画像を画像解析システムによって解析した. その結果を時間軸上の定量的評価(喉頭挙上開始時間, 輪状咽頭筋領域到達時間, 輪状咽頭筋反応時間)と誤嚥の重症度(気管内侵入, 喉頭内侵入, 異常なし), 1回の嚥下動作後の咽頭部(喉頭蓋谷, 梨状陥凹, 喉頭前庭)への造影剤の貯留(なし~軽度, 中等度, 重度)について定性的に評価を行なった. 結果:1. 誤嚥の重症度については術後34, 41日目では気管内侵入がみられた. 48日目では1回目の嚥下では異常なしであり, 2回目では喉頭内侵入がみられた. しかし, 気管内侵入は認められなかった. 2. 咽頭部への造影剤の停留の程度は経過中も顕著には改善しなかった. 3. 定量的には, 術後34日目で喉頭挙上開始時間, 輪状咽頭筋領域到達時間が著しく延長していたが, 術後41, 48日目では改善がみられた. 結論:1. 中咽頭癌切除後には, 再建をおこなっても術後早期には誤嚥の危険性が高いという所見が示された. 2. 術後, 経時的に喉頭挙上開始や舌の送り込み運動が改善され, 誤嚥の危険性も低くなっていた.
ISSN:0389-9705