関節腔の変化と臨床症状
目的:磁気共鳴影像法(MRI)は滑膜・軟骨・骨や筋肉を撮像することができると言われている. しかし, 顎関節においては関節円板の位置・形態や関節円板後部結合組織の状態, 骨変形・骨髄の状態, 関節液の貯留について検討されているにすぎない. また, 顎関節腔内病変でもっとも代表的な癒着病変はMRIでは診断が困難であると言われている. これは関節液と滑膜や軟骨との信号強度の差が少ないために, 画像としてその差を描出するだけの分解能が現在の装置にはないためと言われている. 従来, 顎関節腔の描出には二重造影断層X線撮影がもっとも有用であると言われており, 関節円板の位置・形態や穿孔について高い正診率...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 38; no. suppl; p. 35 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
1998
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Summary: | 目的:磁気共鳴影像法(MRI)は滑膜・軟骨・骨や筋肉を撮像することができると言われている. しかし, 顎関節においては関節円板の位置・形態や関節円板後部結合組織の状態, 骨変形・骨髄の状態, 関節液の貯留について検討されているにすぎない. また, 顎関節腔内病変でもっとも代表的な癒着病変はMRIでは診断が困難であると言われている. これは関節液と滑膜や軟骨との信号強度の差が少ないために, 画像としてその差を描出するだけの分解能が現在の装置にはないためと言われている. 従来, 顎関節腔の描出には二重造影断層X線撮影がもっとも有用であると言われており, 関節円板の位置・形態や穿孔について高い正診率が報告されてきたが, 癒着病変に関する報告は少ない. これはX線撮影の性格上, 関節円板そのものを描出することが出来ないために, 関節円板あるいは関節円板後部結合組織のどの部分が癒着しているか判定が不可能なためと思われる. そこで, 我々は両者の利点を兼ね備えたMR arthrographyにより, 関節腔と関節円板を同時に描出し, 顎関節腔の癒着と保存療法が奏効しなかった症例との関係について検討した. 対象・方法:顎関節症症状を主訴に来院した患者の中で, MRIにより顎関節内障あるいは変形性顎関節症と診断され, 鎮痛剤と開口練習による保存療法が奏効しなかった20名24関節(男性1名・女性19名で平均年齢42.7±17.5歳)に対してMR arthrographyを施行し, 症状側20関節を検討の対象として癒着所見について検討した. 結果:初診時のMRIでは変形性顎関節症18例, 非復位性顎関節円板転位2例であった. MR arthrographyにおける癒着所見は関節円板の上面10関節(55%), 下面18関節(90%)であり, 関節円板後部結合組織では上面10関節(55%), 下面12関節(60%)に認められた. 結論:保存療法の奏効しない顎関節内障や変形性顎関節症患者においては高頻度で癒着が認められた. しかし, 関節腔の所見を得る方法は現在のところ造影撮影をおいて他になく, 無作為抽出あるいは経時的な変化を追った検討は困難であり, 癒着などの関節腔内所見と臨床症状との関係は今後の画像診断法の進歩をまたざるを得ない. |
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ISSN: | 0389-9705 |