片側に巨大な上顎洞を認めた一症例

上顎洞については咬合機能, 顎骨におよぼす影響, 大きさ, 形態等について各方面から研究がなされている. 今回我々は片側上顎洞のみ巨大化を認める一症例を経験し, X線画像的検討を行った. 患者は17歳女性で顔面血管腫を主訴として平成8年11月29日に日本大学松戸歯学部付属歯科病院を受診した. 生下時より顔面に血管腫を認め, 平成6年よりレーザー照射治療を行い, 頬部には部分的に治療効果を認めたが, 上口唇の腫脹, 疼痛を認めたので今回血管腫切除術の術前検査のためCT撮影を行った. 現症については右側顔面に広がる血管腫を認め, 又上口唇の下垂を認めた. この巨大上顎洞の症例と顔面半側委縮症により...

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Published in歯科放射線 Vol. 37; no. suppl; p. 104
Main Authors 関直美, 森下一夫, 岡田学, 加藤尊巳, 池島厚, 鈴木宏巳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 1997
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ISSN0389-9705

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Summary:上顎洞については咬合機能, 顎骨におよぼす影響, 大きさ, 形態等について各方面から研究がなされている. 今回我々は片側上顎洞のみ巨大化を認める一症例を経験し, X線画像的検討を行った. 患者は17歳女性で顔面血管腫を主訴として平成8年11月29日に日本大学松戸歯学部付属歯科病院を受診した. 生下時より顔面に血管腫を認め, 平成6年よりレーザー照射治療を行い, 頬部には部分的に治療効果を認めたが, 上口唇の腫脹, 疼痛を認めたので今回血管腫切除術の術前検査のためCT撮影を行った. 現症については右側顔面に広がる血管腫を認め, 又上口唇の下垂を認めた. この巨大上顎洞の症例と顔面半側委縮症により外科的処置を受けた症例と顎機能的顔貌が正常と考えられる症例とのCT画像の比較検討を行った. 巨大上顎洞の症例において, P-A規格分析法では顔面骨の左右幅はほぼ対称であるのに対して上顎洞上下径の拡大を認めた. また, Lo-Lo’(Latero-orbitaleを結んだ平面)が右側上方に傾斜し咬合平面, CMo-CMo'(上顎歯槽基底部)を結んだ平面が右側下方傾斜を認めた. Lateralおいては上顎洞は全体的に大きいようであったが左右の重複により明確ではなかった. また, CTにおいて体積は右側41.3立方センチメートル左側19.9立方センチメートルと左右比約2倍であった. 半側委縮症においては両側上顎洞ともCTによる上顎洞体積について, 他の報告からほぼ正常範囲と考えられ, 上顎洞の体積の左右差においても比較的小さく認められた. CT画像の上顎洞面積の差異に比べ顔貌の変化は小さく, 従来指摘されているように上顎洞の顔貌におよぼす影響は比較的小さいと考えられた.
ISSN:0389-9705