MRI拡散強調画像の基礎的研究
水の拡散測定は, 組織の質的・動的解析に有用である. NMRによる拡散の研究は, 古く1960年代より行われてきたが, 実際にin vivoでの画像化が可能となったのは近年である. 一般に, 生体組織での水の動きは, 血流や髄液流のようなマクロの流れから, 灌流のような毛細血管の流れ, 拡散という100μm/sec程度のランダムなミクロの動きまで, 多岐にわたっている. MRIでは, spin echo法のT2強調画像において, 180度pulseの前後にmotion probing gradient(MPG) pulseを付加することで拡散という100μm/sec程度のランダムな動きを画像化...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 36; no. suppl; p. 97 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
1996
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | 水の拡散測定は, 組織の質的・動的解析に有用である. NMRによる拡散の研究は, 古く1960年代より行われてきたが, 実際にin vivoでの画像化が可能となったのは近年である. 一般に, 生体組織での水の動きは, 血流や髄液流のようなマクロの流れから, 灌流のような毛細血管の流れ, 拡散という100μm/sec程度のランダムなミクロの動きまで, 多岐にわたっている. MRIでは, spin echo法のT2強調画像において, 180度pulseの前後にmotion probing gradient(MPG) pulseを付加することで拡散という100μm/sec程度のランダムな動きを画像化することが可能である. この方法を用いて撮像した画像は拡散強調画像(Diffusion weighted image)と呼ばれる. MPG pulseを付加するとプロトン拡散運動の高いもの(早い拡散)は, プロトン拡散運動の低いもの(遅い拡散)に比べ信号の減衰が大きく低信号になる. また拡散の程度は, MPG pulseが印加されていないT2強調画像とb factor(MPGの強さを表わす単位)を数回変えて測定した拡散強調画像の信号強度の減衰直線(対数)から各画素子の見かけの拡散係数(Apprent diffusion constant;ADC)が算出される. それを白黒表示することでADC画像が作成できる. ADC画像では, 拡散の早いものほどADCが大きな値となり, 高信号として表現される. 拡散強調画像からは, 水分子の拡散の速さ, 水分子の拡散の異方性(anisotrophy)の2つの大きな情報が得られると言われている. 今回は, 血液を材料とし段階的にPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し撮像を行った. 撮像には, 島津社製Magex 150を使用し, spin echo法にてTR(2500ms), TE(140ms), 加算回数(2回)slice(8mm)で行い, MPG pulseは8mT/mと11mT/m(b factor;>400sec/平方ミリメートル)とし, 周波数encode(X軸), 位相encode(Y軸), スライス(Z軸)方向に各撮影毎印加した. また, MPG pulseを印加しないT2強調画像を併せて撮像し両画面からADCを算出した. 血液成分濃度が低下するほど拡散係数の上昇がみられ, ADC画像で高信号としてみられた. ADC画像で筋信号のものは水分含有率が高く, 低信号のものは水分含有率が低いことが示唆され, 水分含有率が拡散係数に関わる1つの大きなfactorではないかと思われた. しかし, 生体においては, 種々なfactorが関わってくるので今後検討が必要である. 従来のMR画像は一般的には, プロトンの緩和時間の違いを画像化したものであるが, 拡散強調画像ではプロトン拡散運動の違いを画像化することができ生体で重要な役割をしている水分子の細織内の拡散という新しい情報を与えてくれる. このことより種々の病態解析の有用な一手段になると考えられた. |
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ISSN: | 0389-9705 |