3D-CT像における顎骨骨折線の再現性の検討
通常のX線画像は, 3次元の解剖学的構造物を2次元の画像として表現するため, 顎顔面領域のように多くの解剖学的構造物が重なりあう部位では実体の把握に制限を受けざるを得ない. 骨折においても同様に, 骨折線の走行や骨偏位を2次元の画像から正確に把握するのは, 困難となる場合がある. そのためCTにより骨折部位の精査を行うことが多いが, 複雑な骨折線の走行の連続性や骨片の偏位などの情報を2次元画像から読みとることができても, その情報を主治医や患者に早く正確に伝えることは容易でなく, 実体を把握しやすい3次元画像や実体模型の必要性があると思われる. (目的)顎顔面領域の骨折症例において, 2次元画...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 36; no. suppl; p. 80 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
1996
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | 通常のX線画像は, 3次元の解剖学的構造物を2次元の画像として表現するため, 顎顔面領域のように多くの解剖学的構造物が重なりあう部位では実体の把握に制限を受けざるを得ない. 骨折においても同様に, 骨折線の走行や骨偏位を2次元の画像から正確に把握するのは, 困難となる場合がある. そのためCTにより骨折部位の精査を行うことが多いが, 複雑な骨折線の走行の連続性や骨片の偏位などの情報を2次元画像から読みとることができても, その情報を主治医や患者に早く正確に伝えることは容易でなく, 実体を把握しやすい3次元画像や実体模型の必要性があると思われる. (目的)顎顔面領域の骨折症例において, 2次元画像で評価された骨折線や骨偏位などの情報が, 3D-CT画像上でどの程度再現され, 容易に読みとることが可能かについて比較評価を行った. (対象および方法)本学にて初診時に単純X線写真, X線CT撮影を行い3D-CT画像構築を行った, 顎顔面領域骨折の52症例を対象とした. 使用したX線CT装置は, TCT-900S(東芝)で3次元画像構築は同装置のソフトにより行った. それぞれの症例において, 単純X線写真およびCT画像による評価を行った後, 3D-CT画像上にて骨折線や骨偏位などの情報が, どの程度読みとれるかについて3人の歯科放射線科医が比較検討し, 次のような評価を行った. 1:INFERIOR 2:SIMILAR 3:SUPERIOR a:more rapid interpretation of information b:additional information provided また, これらの評価とCTのスライス厚, 骨折部位, 骨片の偏位との関係についても検討した. (結果)1. 3D-CTの52症例のうち23例では, 3aまたは3a, bと評価された. また, 18例では評価は2であった. 2. 上顎骨とその周囲の骨折では, 22例中12例が3aまたは3a, bと評価され, 4例が2と評価された. 下顎骨骨折では, 24例中9例が3aまたは3a, b, 11例が2と評価された. なかでも上顎洞壁, 下顎関節突起部の骨折で評価が高かった. 3. スライス厚2mmでは, 45例中23例で3aまたは3a, b, 16例で2と評価された. 5mmスライスでは, 2次元画像を上回る評価はなかった. 4. 骨偏位のあったものでは, 23例中17例で3aまたは3a, b, 6例で2と評価され, 評価1のものはなかった. わずかに骨偏位のみられたものでは, 22例中7例で3a, 3a, b, 8例で2と評価された. 偏位のない症例では, 2次元画像を上回る評価はなかった. |
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ISSN: | 0389-9705 |