社会基盤としての産業保健活動

“社会基盤としての産業保健活動”をテーマに「日本における産業保健の意義再考」と題して(株)デンソー北九州製作所の産業医 東敏昭先生より, 「メンタルヘルスと次世代育成支援」と題して福岡市こども総合相談センター所長藤林武史先生より, 「職域における健康診断の功罪とこれから」と題して三井化学(株)産業医 土肥誠太郎先生より, 「企業の社会的責任(CSR)における産業保健のあり方」と題して富士通コミュニケーションサービス(株)常任顧問の南昌宏先生より, ご講演いただきました. 東先生は法制度の歴史的変遷, 諸外国との比較の中で, 社会活力の維持を支援する社会基盤の一つとしてグローバルな視点, ローカ...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 54; no. 2; pp. 82 - 83
Main Authors 織田進, 西田和子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 01.03.2012
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Summary:“社会基盤としての産業保健活動”をテーマに「日本における産業保健の意義再考」と題して(株)デンソー北九州製作所の産業医 東敏昭先生より, 「メンタルヘルスと次世代育成支援」と題して福岡市こども総合相談センター所長藤林武史先生より, 「職域における健康診断の功罪とこれから」と題して三井化学(株)産業医 土肥誠太郎先生より, 「企業の社会的責任(CSR)における産業保健のあり方」と題して富士通コミュニケーションサービス(株)常任顧問の南昌宏先生より, ご講演いただきました. 東先生は法制度の歴史的変遷, 諸外国との比較の中で, 社会活力の維持を支援する社会基盤の一つとしてグローバルな視点, ローカルな視点から日本の産業保健の果たしてきた役割・意義について再考し, 職業病, 作業関連疾患の発症進展予防, 就業を通しての健康保持増進やメンタルヘルスなどに寄与してきたことを述べられました. 同じく産業保健専門職が自主的・予見的にリスクの低減に寄与する, あるいはしてきたことが専門職の存在意義であること, 産業保健が社会基盤としての意味をもつためには, 働く人の健康を守るための仕組みが機能しているかに懸っていると述べられました. 藤林先生は精神保健の専門家の立場から, 地域精神保健, 産業精神保健, こども総合相談センターでの経験を踏まえ, 様々な事例を紹介され, こどもの問題はその家族の問題を越え労働への影響が, 逆に労働者の問題は家族へそしてこどもへと波及し, 地域や学校・職域といった集団の中で孤立しやすい時代背景が根底にある中, 人と人との繋がり, 地域-職域のネットワークの問題, ソーシャルサポートの問題などを提起され, 領域を越えた連携の必要性や個人・家族を支える仕組みづくり, 次世代育成支援へとリンクしていることの必要性を述べられました. 土肥先生は企業の産業医の立場から法制度としての健康診断について, エビデンスを反映した健診項目見直しの必要性や複雑化している健診項目の簡素化の提案, 健康とサービス供給の一元化や健診項目を単独の有効性や有益性のみで語るのではなく, 産業保健の本来の目的に沿った健康診断項目を検証しつつ改善・施策へつなげていくことの必要性について述べられました. 南先生は経営者の立場から, 社会基盤としての企業が持続可能な成長を遂げるためには“人”を大切にする企業風土が大切であり, 牽いては顧客の満足, 顧客の信頼に繋がることで企業の継続に繋がることを述べられました. すなわち“CSはESにあり(顧客満足は従業員満足にあり)”をモットーとして掲げ, 経営活動の旗しるしとして活動されてきたことをご紹介いただきました. 人を大切にするということは人とのつながりを大切にすることであり, コミュニケーションを大切にするということでした. そのためにトップの考えの見える化を図り, 企業トップからのメール配信, 企業情報のオープン化, 情報共有の徹底, 社長ブログの発信など具体的な紹介をしていただきました. 産業保健活動が社会基盤として機能していくためには, 事業者および労働者による安全で健康な自主的労働環境形成を支援していく具体的な提案を多くご提示いただきました. 経済の低迷, 不安定な政治・政策, 人が孤立しやすい時代背景, この時期だからこそ必要なご提案であったと思います.
ISSN:1341-0725