地方から発信する今日の産業保健の課題とその対応(北陸甲信越地方会企画)
はじめに, 一企業での最近5年間の労働災害の増加傾向を示した. (1)その増加分が非正規社員による, (2)直近では全体の約4割を占める, (3)請負社員での労災発生率が約2%である, (4)派遣社員ではその実数が把握できず発生率も不明であることが城戸より報告された. 小杉は, 地域との連携を図りながら非正規社員の健康情報を把握し, 健康管理に努めていること, 特に, 厚生センター(旧保健所)と連携して糖尿病教室を開催し, 請負業者とその家族の参加を得て好評であった事例を報告した. 成功の秘訣はあらゆるルートを最大限に活用し, 派遣元企業産業医(地域医師会)との連絡会を組織化している. 赤羽は...
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Published in | 産業衛生学雑誌 Vol. 48; no. 6; pp. 223 - 224 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本産業衛生学会
2006
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1341-0725 |
Cover
Summary: | はじめに, 一企業での最近5年間の労働災害の増加傾向を示した. (1)その増加分が非正規社員による, (2)直近では全体の約4割を占める, (3)請負社員での労災発生率が約2%である, (4)派遣社員ではその実数が把握できず発生率も不明であることが城戸より報告された. 小杉は, 地域との連携を図りながら非正規社員の健康情報を把握し, 健康管理に努めていること, 特に, 厚生センター(旧保健所)と連携して糖尿病教室を開催し, 請負業者とその家族の参加を得て好評であった事例を報告した. 成功の秘訣はあらゆるルートを最大限に活用し, 派遣元企業産業医(地域医師会)との連絡会を組織化している. 赤羽は, 派遣先企業の産業医として, (1)派遣元企業の委託を受け, 派遣労働者の同意を前提に, 特殊検診以外にも, 雇入れ検診や定期健診を実施している, (2)その結果就業制限をかけた具体的な事例の提示, (3)特に, 派遣社員の健康管理上雇入れ健診が欠かせないことを強調した. 田畑は, 日系ブラジル人が請負社員として勤務する企業での産業医経験を踏まえ, 通訳を兼務する請負業者の担当者からの個別の健康相談に応じ, 健康診断も社員と一緒に実施し, 総合的な健康管理が可能であったことを報告した. 法令に限定されないきめ細やかな健康管理の重要性が示された. 小坂は, 亀田らと北陸甲信越6県の企業で働く産業看護職への調査結果を発表した. (1)派遣元と派遣先との労働安全衛生管理の連携は6割の企業で実施されているものの, (2)両者の産業医, 産業看護職間では2割以下である, (3)派遣先の産業看護職がどこまで係わるかは企業毎に異なる, (4)特に, 救急時の対応に苦慮していることが報告された. 最後に, 派遣企業の専属産業医の廣から特別発言があった. (1)法令の整備, (2)大規模実態調査, (3)事例の検討が指摘された. また, 短期雇用が多く継続的な健康管理の難しさが指摘された. フロアからは, 非正規社員の雇用に対する学会としての見解が求められたが, まずは現状の問題把握を先行させて判断すべきとの見解が出された. |
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ISSN: | 1341-0725 |