西洋諸国とわが国における中皮腫罹患/死亡と石綿消費量の生態学的関連

本研究の目的は西洋諸国とわが国で中皮腫に関する罹患または死亡率(以下, 罹患/死亡率)と先行する人口1人当たり石綿消費量の間の生態学的関連を評価することである. 生態学的関連, すなわち地域相関を評価する目的で国のレベルの指標を採用した. すなわち1)直近における年齢15歳以上人口に対する中皮腫の罹患/死亡率, および2)10-25年以前における全年齢人口に対する一人当たり石綿消費量, の二指標である. データが入手可能であった西洋10ヶ国においては, 中皮腫の罹患/死亡率と先行する一人当たり石綿消費量の間に, 明らかな直線的相関関係が示された. スピアマンの相関係数は0.70(p=0.03)...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 41; no. 1; p. 21
Main Authors 高橋謙, Matti S HUUSKONEN, Antti TOSSAVAINEN, 東敏昭, 大久保利晃, Jorma RANTANEN
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 1999
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ISSN1341-0725

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Summary:本研究の目的は西洋諸国とわが国で中皮腫に関する罹患または死亡率(以下, 罹患/死亡率)と先行する人口1人当たり石綿消費量の間の生態学的関連を評価することである. 生態学的関連, すなわち地域相関を評価する目的で国のレベルの指標を採用した. すなわち1)直近における年齢15歳以上人口に対する中皮腫の罹患/死亡率, および2)10-25年以前における全年齢人口に対する一人当たり石綿消費量, の二指標である. データが入手可能であった西洋10ヶ国においては, 中皮腫の罹患/死亡率と先行する一人当たり石綿消費量の間に, 明らかな直線的相関関係が示された. スピアマンの相関係数は0.70(p=0.03), 説明率R^2 は66%と計算された. しかしながら, わが国の対応するデータポイントは, 中皮腫死亡率が相対的に極めて小さいため, 当該直線から離れて位置していた. わが国のデータポイントを取り込んだ場合, 有意の相関関係は消失した. わが国におけるこれまでの経時的石綿消費量曲線は, 西洋諸国に比べて遅れて立ち上がった経緯があり, 西洋諸国の動向から予想される累積曝露の影響は未だ顕在化していない可能性がある. (J Occup Health 1999;41:8-11)
ISSN:1341-0725