ベジタリアンの系譜

近年, 先進国においては動物性タンパク質や動物性脂肪の過剰摂取によって, 糖尿病や心臓病などの成人病が激増している. そんな状況の中, 欧米では肉食への反省として菜食への関心が高まりつつある. 1977年, アメリカ上院栄養特別委員会は動物性脂肪の過剰摂取が種々の成人病を引き起こしているとして, 動物性脂肪の摂取を減らし, 穀類, マメ類, イモ類などの摂取を増やすよう勧告した. 菜食に近づけるような食事目標が制定された中で, 1988年, アメリカ栄養学会はベジタリアンの食事(乳卵菜食)を科学的に支持する論評を発表した. それは「ベジタリアンの食事は栄養的に良い状態であり, 糖尿病, 高血圧...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 38; no. 1; pp. 67 - 70
Main Author 井上勝六
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 1996
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ISSN1341-0725

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Summary:近年, 先進国においては動物性タンパク質や動物性脂肪の過剰摂取によって, 糖尿病や心臓病などの成人病が激増している. そんな状況の中, 欧米では肉食への反省として菜食への関心が高まりつつある. 1977年, アメリカ上院栄養特別委員会は動物性脂肪の過剰摂取が種々の成人病を引き起こしているとして, 動物性脂肪の摂取を減らし, 穀類, マメ類, イモ類などの摂取を増やすよう勧告した. 菜食に近づけるような食事目標が制定された中で, 1988年, アメリカ栄養学会はベジタリアンの食事(乳卵菜食)を科学的に支持する論評を発表した. それは「ベジタリアンの食事は栄養的に良い状態であり, 糖尿病, 高血圧, 骨粗鬆症などの成人病になりにくく, 大腸がんや肺がんなど各種のがんになる危険性も少ない」というものであった1). 以後アメリカには菜食ブームが到来し, 現在では健康上・宗教上・思想上の理由などのために菜食する人たちは1,500万人に達するという(イギリスのベジタリアンは900万人といわれる)2).
ISSN:1341-0725