3. 病理学的にNecrotizing Sarcoid Granulomatosis(NSG)との鑑別が困難であったWegener肉芽腫症の1例

症例は58歳男性. 主訴は咳嗽, 血痰. 2009年10月頃より咳嗽が持続するため同年11月に近医を受診. 喘息を想定した治療を受けるも改善を認めず, 同年12月には血痰も出現したため他院を受診. 胸部CT上で両肺の結節を認めたため, 精査加療目的に2010年1月に当科紹介受診, 入院となる. 経過中, 発熱, 体重減少はない. 血液学的にはCRP, 可溶性IL-2レセプターが軽度上昇を認めるも, MPO-ANCA, PR3-ANCA, ACEは正常であった. 胸部CTでは左右S10にそれぞれ20×33mm, 25×35mmの境界不明瞭, 辺縁不整の結節影を認め, これらは周囲にGGOを伴って...

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Published in気管支学 Vol. 34; no. 1; pp. 85 - 86
Main Authors 狩野智絵, 小島哲弥, 佐藤寿高, 福家聡, 斎藤拓志, 西浦洋一, 磯部宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本呼吸器内視鏡学会 2012
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Summary:症例は58歳男性. 主訴は咳嗽, 血痰. 2009年10月頃より咳嗽が持続するため同年11月に近医を受診. 喘息を想定した治療を受けるも改善を認めず, 同年12月には血痰も出現したため他院を受診. 胸部CT上で両肺の結節を認めたため, 精査加療目的に2010年1月に当科紹介受診, 入院となる. 経過中, 発熱, 体重減少はない. 血液学的にはCRP, 可溶性IL-2レセプターが軽度上昇を認めるも, MPO-ANCA, PR3-ANCA, ACEは正常であった. 胸部CTでは左右S10にそれぞれ20×33mm, 25×35mmの境界不明瞭, 辺縁不整の結節影を認め, これらは周囲にGGOを伴っていた. その他の肺野や縦隔肺門に異常はみられず, 腹部CTでも特記すべき異常を認めなかった. FDG-PETでは同肺内結節はSUVmaxで14前程度の集積亢進を認めたが, 他部位に異常集積はみられなかった. 悪性腫瘍や肉芽腫性疾患を疑い気管支鏡を施行したところ, 気管支全体が浮腫状, 易出血性であり, 一部粘膜の不整も伴っていた右中葉入口部から生検を行った. 病理では上皮下の一部に多核巨細胞の集簇や肉芽腫を認めるも, 診断にいたる特徴的所見に乏しいという結果であったため, 外科にて胸腔鏡下肺生検術を施行した. 生検標本の病理では, 多数の多核巨細胞を伴うびまん性肉芽腫を認め, 中心部には炎症細胞浸潤・壊死・血管炎も伴っており, Necrotizing Sarcoid Granulomatosis(NSG)かWegener肉芽腫症が考えられたが, その後の詳細な病理学的検討の結果, Wegener肉芽腫症の診断とした. 今回, 病理学的にNSGとの鑑別に苦慮したWegener肉芽腫症を経験したので, 両者の臨床像・病理像に関する考察を加えて報告する.
ISSN:0287-2137